報復を最愛の君と

情報の収穫

「裏切りってことですか?」
その言葉がしっくりきた気がした。
最初から、カナタは私を騙していたんだ。
またあの時の悲しみがあふれてきた。
「うん、そうなのかも。カナタは私のことどうも思ってないのかも。私にとってカナタは……とっても大切な人だったのにっ…」
両親よりも家族としてみていた、大切な人だった。
私の目から一粒の涙が流れていた。
「私にはヒメア様の悲しみを全て理解することはできません。しかし、家族を失う痛みはわかる気がします」
「家族を失う…?」
「はい。ヒメア様はカナタという家族を失った。いや、最初からいなかった幻のカナタを見ていたことに気がついた、という方が正しいでしょうね」
その言葉を聞いて図星すぎて、涙がボロボロ出てきた。
そうだ、最初からカナタは存在しなかった。
私が見ていたのは、カナタ自身が作った偽りのカナタ。
「カノン様も天竜様と銀狼様に騙されていたのです。彼らの表の顔に」
クラも悔しいのか、涙を流していた。
私達は復讐をとげなければならない。
泣いている暇はないけれど、今は少しだけ。
泣き虫な私を許して。
ーーーーー
「クラ〜!姫様〜!」
ルナの声が聞こえて目を覚ました。
目の前にはクラの顔が。
どうやら、昨日はふたりで抱きしめ合いながら寝てしまったみたい。
目の横にはふたりとも涙の跡があった。
「姫様、起きましたね!もう9時ですよ?スイとソラ様はもう情報収集に行ってしまいました」
「えっ?!9時?!」
もうそんな時間だったなんて。
私は布団から出て、急いで着替えをした。
「クラも起きてください!!」
「ん…」
クラもようやく起きたみたい。
眠そうに目をこすっている。
「クラ、準備をして。スイとソラはもう行っちゃったみたいなの!」
「そうなんですか?それはすみません…」
まだ寝ぼけた様子で、のそのそと準備を始めた。
それから、洗面所の方へ行ってしまった。
数分経って戻ってくると、いつものようにシャキッとしたクラ戻っていた。
「それでは行きましょうか」
私はルナと顔を見合わせて苦笑した後、うなずいた。
ーーーーー
宿から出て商店街へ行くと、ベンチに座っているスイとソラを見つけることができた。
「スイー!ソラ様ー!!」
ルナが名前を呼びながら駆け寄るので、私達も後に続いた。
それから、ソラと目が合う。
「おはようふたりとも。よく眠れた?」
「おはよう。ま、まあ…」
寝過ぎたくらいにね。
それから、私達もベンチに座る。
「それで、情報の収穫はあった?」
「ああ。もちろんあったよ。ベルス国は知っての通り人間は通してくれなくて、神というのは天竜と銀狼らしい。あとは、秘密の裏道があるってことかな」
「秘密の裏道?」
「うん」
ソラは満足げに笑った後、声をひそめてこう言った。
「王宮に入れる道があるんだって。天竜と銀狼に会えるかもしれない」
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