報復を最愛の君と
sideラク・レタラ 〜真実〜
あの日も僕はヒメアに会うために、抜け出していた。
早く会いたくて、かけ足で村に向かっていく。
ヒメアの住むアストラ村はとても自然がきれいなところだった。
空気も澄んでいて、すごく心地のいい村だ。
「あれ?ソラじゃない!」
ヒメアの声が聞こえて、僕は振り返った。
ヒメアは洗濯物を川で洗っていたみたいで、洗濯かごを抱えていた。
銀色の髪がゆれて、僕の鼓動は速くなった。
「ごめん、早くきすぎちゃった」
「ううん、大丈夫だよ〜。あ、でも…私まだやることがあるんだ」
「そっか。じゃあ、先に村に行ってるね」
「うん。そうして」
僕よりずいぶんときゃしゃな体で、毎日頑張っていた。
いつもと変わらない日常だったのに。
その日常は、いとも簡単に終わりを告げる。
ーーーーー
街に近寄った瞬間、いつもと違うことに気がついた。
いつもはにぎやかで、人は少ないけど活気あふれる村だ。
今日はそれが静かだから不自然に感じる。
嫌な気がしてならない。
ヒメアの家に行き、ドアを開ける。
誰もいない。
この時間なら、いつもはヒメアの両親がいるはずだ。
何が起きているんだ。
その時、風と共に流れてくる薬の匂い。
違和感を覚え、普段は行かない地下室へと行った。
ツンっとする薬の匂いと、生臭い血のような匂いが僕に警告をする。
不安が僕をあおった。
突然、コツコツという革靴の音が後ろから聞こえた。
とっさに体が動き、僕は物陰に隠れた。
「実験体は集まった。あとはこの村の能力者達を運ぶだけだ」
男の声がした。
物陰から少しだけ頭を出して、男の様子をうかがった。
男はローブを着てフードをかぶっており、顔が見えなかった。
後ろにはきゃしゃな女がいたが、同じような格好をしていたため顔は分からない。
「ねぇ、実験体を集めるの早いんじゃない?だって、あのカナタとかいう研究者も見つかってないしぃ〜」
女のしゃべり方に、僕は嫌悪感を抱いた。
気持ちが悪い。
どうやら彼らは、この村の人を実験体として連れていく気なのだ。
「大丈夫だ。能力者といえど、俺達に抵抗はできまい」
「ま、そうだね〜。村の人はあれで全員?」
「そんなこと、村の住人に聞けば分かるだろう」
2人はそんな話をしながら奥へ進んでいった。
この奥には物置部屋がある。
そこにきっとヒメアの両親もいるのだろう。
けれど、今行けばさっきの奴らとはちあわせる。
なら僕が今やるべきことは…。
(ヒメア…!!)
僕は急いで来た道を引き返していった。
ーーーーー
僕は息を切らし、乾ききった喉の痛みを感じながら走った。
ヒメアはまだ洗濯物を洗っている。
いつも遊んでいるあの川へ走った。
「ヒメア…!」
銀色の髪が見えて、彼女だと思った。
声をかけるとヒメアは振り返って、僕に手を振ってくれた。
でも、僕の様子を見てその表情は不安にゆがんだ。
“もしも”。
ヒメアはそんな言葉の中で生きていると、そう知っていたから。
言えなかった。
「村には戻らないで」
君に今真実を告げたくないと思った。
僕の1番の後悔はこれだ。
早く会いたくて、かけ足で村に向かっていく。
ヒメアの住むアストラ村はとても自然がきれいなところだった。
空気も澄んでいて、すごく心地のいい村だ。
「あれ?ソラじゃない!」
ヒメアの声が聞こえて、僕は振り返った。
ヒメアは洗濯物を川で洗っていたみたいで、洗濯かごを抱えていた。
銀色の髪がゆれて、僕の鼓動は速くなった。
「ごめん、早くきすぎちゃった」
「ううん、大丈夫だよ〜。あ、でも…私まだやることがあるんだ」
「そっか。じゃあ、先に村に行ってるね」
「うん。そうして」
僕よりずいぶんときゃしゃな体で、毎日頑張っていた。
いつもと変わらない日常だったのに。
その日常は、いとも簡単に終わりを告げる。
ーーーーー
街に近寄った瞬間、いつもと違うことに気がついた。
いつもはにぎやかで、人は少ないけど活気あふれる村だ。
今日はそれが静かだから不自然に感じる。
嫌な気がしてならない。
ヒメアの家に行き、ドアを開ける。
誰もいない。
この時間なら、いつもはヒメアの両親がいるはずだ。
何が起きているんだ。
その時、風と共に流れてくる薬の匂い。
違和感を覚え、普段は行かない地下室へと行った。
ツンっとする薬の匂いと、生臭い血のような匂いが僕に警告をする。
不安が僕をあおった。
突然、コツコツという革靴の音が後ろから聞こえた。
とっさに体が動き、僕は物陰に隠れた。
「実験体は集まった。あとはこの村の能力者達を運ぶだけだ」
男の声がした。
物陰から少しだけ頭を出して、男の様子をうかがった。
男はローブを着てフードをかぶっており、顔が見えなかった。
後ろにはきゃしゃな女がいたが、同じような格好をしていたため顔は分からない。
「ねぇ、実験体を集めるの早いんじゃない?だって、あのカナタとかいう研究者も見つかってないしぃ〜」
女のしゃべり方に、僕は嫌悪感を抱いた。
気持ちが悪い。
どうやら彼らは、この村の人を実験体として連れていく気なのだ。
「大丈夫だ。能力者といえど、俺達に抵抗はできまい」
「ま、そうだね〜。村の人はあれで全員?」
「そんなこと、村の住人に聞けば分かるだろう」
2人はそんな話をしながら奥へ進んでいった。
この奥には物置部屋がある。
そこにきっとヒメアの両親もいるのだろう。
けれど、今行けばさっきの奴らとはちあわせる。
なら僕が今やるべきことは…。
(ヒメア…!!)
僕は急いで来た道を引き返していった。
ーーーーー
僕は息を切らし、乾ききった喉の痛みを感じながら走った。
ヒメアはまだ洗濯物を洗っている。
いつも遊んでいるあの川へ走った。
「ヒメア…!」
銀色の髪が見えて、彼女だと思った。
声をかけるとヒメアは振り返って、僕に手を振ってくれた。
でも、僕の様子を見てその表情は不安にゆがんだ。
“もしも”。
ヒメアはそんな言葉の中で生きていると、そう知っていたから。
言えなかった。
「村には戻らないで」
君に今真実を告げたくないと思った。
僕の1番の後悔はこれだ。