【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい

　私は黙って箸を進めた。
　藤川さんも、箸を進めながらビールを口にしている。アルコールが入って、いくらか饒舌になっているように思えた。

　私は唐揚げを食べ終えると、ポテトサラダに手を付ける。唐揚げやポテトサラダも、私が小さい頃から食べている、慣れ親しんだ家庭の味だ。

　家に帰れば、母が冷蔵庫の中に作り置きしたおかずが入っているはずだけど、ここで食事を済ませたので、それは明日の朝ごはんになるだろう。

　葉物野菜も食べ終えると、ちょうど藤川さんも食事を終えたところらしい。

「食事が終わりましたか？　散歩に行きましょう。よかったら、道後の街を案内してください」

　そう言って席を立つと、私にも起立を求めた。
　私は恥ずかしくて顔を上げられないけれど、言われるがまま席を立つと、藤川さんにエスコートされながら店の外へ出るよう促される。

「では、梢子さん、行きましょう」

　藤川さんの声に、みんなが「行ってらっしゃい」と送り出した。

　店の引き戸を開けて、私たちが外に出ると、アーケード街の灯りが眩しく見える。
　私たちは、商店街のアーケード街を前回とは反対方向へ向かって歩き始めた。

「前に話していた時、梢子さんはあまり道後の商店街に顔を出さないって聞いていたけど……」

　並んで歩く藤川さんが、そう言って私に話題を振った。

　よかった、さっき気まずいままだったから、話題があるだけでホッとする。