『夢列車の旅人』 ~過去へ、未来へ、時空を超えて~ 【新編集版】
(5)
起きてからも夢の記憶は鮮明に残っていた。
空中に人差し指を突き出して、〈あれはなんだったんだろうか?〉と考えたが、わかるはずはなかった。
その代わり、下着を着替えずに寝たことを思い出した。
汗のにおいが纏わりついていた。
その場で脱ぎ捨てて、シャワーを浴びた。
すっきりしたところで飯の支度を始めた。
今日は暑いからソーメンにしようと思った。
一束にするか二束にするか迷ったが、迷っているうちにお腹の虫が鳴いたので、二束にした。
茹でている間におかずを探した。
しかし、目ぼしいものはなかった。
冷蔵庫の中には大粒納豆1パックと卵が1つあるだけだった。
仕方がないので、納豆に黄身を混ぜて、おかずにすることにした。
卵を二つに割って、白身だけを捨てて、黄身を納豆の上に置いた。
たれと辛子をかけてしっかり混ぜ合わせると、立派なおかずになった。
茹で上がったソーメンをざるに移して、しっかりぬめりを取って、氷水の中に入れた。
2倍希釈の麺つゆにも氷を入れて、その中にソーメンをチョン付けして、ずずっとすすった。
う~ん、喉越し最高、麺つゆの付け具合最高、
3すすりしたあと、黄身納豆を三分の一ほど口の中に入れた。
うまい、甘辛くて言うことなし、
思わず頬が緩んだ。
2束食べ終わると結構お腹がいっぱいになったので、二つ折りにした布団の上に頭を乗せて寝そべった。
そして、両手の人差し指を突き出して、目の前で先端を合わせた。
しかし、接触した部分に光は灯らなかった。
それはそうだ。
あれは夢の中だから光っただけで現実の世界では再現できない。
〈バカなことを考えるな!〉と苦笑いするしかなかったが、その時ふっとある場面が蘇ってきた。
それは映画のワンシーンだった。
異様に長い人差し指とちっちゃな人差し指が触れ合って光が灯ったあのシーンだった。
そうだ、あれに違いない。
E・Tだ。
でも、なぜE・Tなんだ?
彼女となんの関係があるんだ?
まさか彼女が地球外生命体であると言いたいのか?
なんのために?
それに、地球外生命体が「私を探して」なんて言うか?
言わないよな……、
訳がわからなくなったので考えるのを止めた。