『夢列車の旅人』 ~過去へ、未来へ、時空を超えて~ 【新編集版】

(6)→1980年


 なにがあるんだろう、と考えているうちに電車が止まった。
 ドアが開いたので、松山さんと二人で電車の外に出た。

 本人確認終了が無事終わって改札を抜けると、目の前に階段が見えた。
 しかし、急な階段だった。
 なのに、手すりがなかった。
 落ちないように一歩一歩慎重に上がっていった。

 一番上に辿り着くと、『1980年7月29日へようこそ』と書かれている扉が見えた。
 それを抜けると、また扉が見えた。
『サンタモニカへようこそ』と書かれていた。

 サンタモニカ? 
 それって、どこだ? 

 頭の中に世界地図を広げたが、その地名を見出すことはできなかった。

 松山さんはどうだろう? 

 視線を向けると、ブツブツ言ってるのが聞こえてきた。

「カリフォルニアか~、ということは、もしかして、あいつらのコンサートか?」

 何か知っているようだった。

「サンタモニカって、どこですか?」

「州で言うとカリフォルニア。郡で言うとロサンゼルス。その西部にある海辺のリゾート地だよ」

 それで頭の中の地図に大体の位置がプロットされたが、それが意味することは何もわからなかった。

「で、さっき、〈あいつらのコンサートか?〉って言いましたよね。あいつらって誰のことですか?」

「カリフォルニアと聞いて何か思い浮かばないか?」

 カリフォルニア*ロック=? 

 頭を捻っても何も思い浮かばなかった。
 両手を広げるしかなかった。

「そのうちわかるよ」

 少し口角を上げた松山さんが扉を押して中に入った。
 その途端、大歓声が聞こえた。
 大きな会場の中は人、人、人で埋め尽くされていた。
 圧倒されて見ていると、手に持ったチケットが光った。
 見ると、座席番号が表示されていた。
 なんと最前列の中央席だった。
 その席に座ってドキドキしながら開演を待った。

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