『夢列車の旅人』 ~過去へ、未来へ、時空を超えて~ 【新編集版】

(7)


 えっ? 
 何? 
 つづく? 

 わたしは慌てて手紙をめくったが、次の紙もミミズの這ったような文字で埋め尽くされていた。

 もう松山さんいい加減にして、と言いそうになった時、大きなあくびが出た。
 続けて出ると、急に目がしょぼしょぼしてきた。
 続きが気になったが、これ以上読み続けるのは難しそうだった。
 手紙をちゃぶ台の上に置いてから部屋の隅に動かして、空いたスペースに布団を敷いて、崩れるように横になった。歯磨きもせず、顔も洗わず、眠りに落ちた。

 目が覚めたら夜の8時になっていた。
 アラームの設定を忘れていたらしい。
 慌てて飛び起きたが、ご飯を食べる時間もシャワーを浴びる時間もなかった。
 口の中が気持ち悪かったのでごしごしと歯磨きだけして、部屋を飛び出した。

        *

 仕事前のミーティングにはなんとか間に合った。
 しかし、休憩時間が来るまでお腹が鳴りっぱなしだった。
 誰にも聞かれる心配はないので恥ずかしくはなかったが、余りの空腹に耐えかねて何度も唾を飲み込んだ。
 それが腹の足しになるはずはなかったが、それしかできることはなかった。

 最初の休憩時間になった途端、コンビニに走り込んで、カツサンドを二つ買った。
 飲み込むのももどかしく、オレンジジュースで流し込んだ。
 それで人心地(ひとごこち)が付いたが、腹が満たされると手紙の続きが気になって仕方がなかった。
 休憩の度にその思いは強くなり、仕事が終わるのを待ちかねて、ダッシュで部屋に戻った。

        *

 先ずシャワーを浴びた。
 次に下着姿でやかんを火にかけ、お湯を沸かしている間にビールをグビグビッと喉に流し込んだ。
 それから即席焼きそばの容器に熱湯を入れて3分待ち、お湯を出してからソースを絡めて掻き込むように食べて、すぐに歯を磨いて、急いでパジャマを着た。
 そして、残ったお湯をマグカップに入れて、部屋の端にあるちゃぶ台の上に置き、今朝から敷きっぱなしの布団を整えて、いつでも寝れる状態にした。

 準備万端にして手紙を手に取ると、ミミズの這ったような文字が待ち受けていた。
 一瞬にして〈つづき〉の世界へ入っていった。

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