『夢列車の旅人』 ~過去へ、未来へ、時空を超えて~ 【新編集版】

(4)


 古い二階建ての木造アパートだった。
 道路に面した北側に玄関があり、その前が駐車場になっていた。
 建屋の左側に〈く〉の字の形をした外階段があり、その脇に郵便受けが並んでいた。
 205号室が高松さんの部屋だった。

 階段を上がって高松さんの部屋の前に立つと、ホームセンターで売っているようなネームプレートがドアに貼り付けてあった。
 すぐに鍵を隠せそうなところを探したが、のっぺりとしたドアに隠す場所はなかったし、ドア前に植木鉢も牛乳箱もなかった。
 もしかしてドアが開く……訳はなかった。
 しっかり閉まっていた。
 窓も同じだった。
 わたしは思案に暮れた。

「何かヒントになるようなことを言っていませんでしたか?」

 責めないような口調で彼女が顔を覗き込んだが、力無く首を横に振るしかなかった。

「そうですか……」

 彼女も思案するような顔になったが、「多分違うとは思いますが、念のために下の郵便受けを見てみましょうか」と階段の方へ目を向けた。
 わたしもそれ以外考えつかなかったので、彼女の後ろから階段を下りた。

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