『夢列車の旅人』 ~過去へ、未来へ、時空を超えて~ 【新編集版】

(5)


 郵便受けの前に立つと、受け口からチラシがはみ出していた。
 それを引っ張り出して中を覗くと、何かあるようだが、それが何かはわからなかった。
 万が一と思ってツマミを引っ張ったが、当然のように開かなかった。
 ツマミはダイヤル式になっていて、0~9までの数字が並んでいた。
 セットする目印の下には9が合わせられていた。

 開け方の予想は大体ついた。
 右へ1回転か2回転、そして左へ1回転。
 多分そういう開け方だろう。
 しかし、セットされた数字がわからない。
 それに、1回転か2回転かによっても違う。
 簡単ではないのだ。
 それでも適当な数字で試そうかという思いが浮かんだが、いい大人二人が郵便受けの前でガチャガチャやるわけにはいかない。
 安易な考えを振り捨てた。

 アパートの前の人通りは多くなかったが、それでも長居をしたら不審な目で見られるだろう。
 同じアパートの住人や近所の人の目もある。
 もし通報されて警察に事情徴収されたら、説明を信じてもらうのは難しい。
 夢という形の中で過去行きの電車に乗って中世のフィレンツェに行って、そこに友人がとどまっているなんて誰がまともに聞くだろうか。
 頭のおかしい人間と思われるのが関の山だ。
 そんなことになったら非常にヤバイ。
 だから、やるなら一発で決めなければならない。
 そのためには誰かが操作しているところを確認しなければならない。
 といっても、郵便受けの前に立って二人で観察するわけにもいかない。

 どうすべきか? 

 と考える間もなく閃いた。
 自分がどこかに隠れて観察する間、彼女に時間つぶしを兼ねてダイヤルの番号を予測してもらうのがいいのではないかと。
 それを伝えると彼女は同意してくれたので、近くでコンビニかカフェを探して、そこで待ってもらうことにした。

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