君ともう一度、 恋を始めるために

「例の彼女が犯人じゃないの？」

優香が言うのは玲奈のことだろう。
実際柚葉も最初に玲奈を疑った。
玲奈にとって柚葉は邪魔な存在で、嫌がらせをする動機は十分にある。
だが、玲奈が犯人だとする証拠が何もない。

「どちらにしても、もう少し様子を見るわ」

旅館の経営にはかなりダメージを受けていて祖母は警察に相談しようかと話しているが、この件がもし涼に関係する人たちによるものだったらと思うと柚葉はあまり大事にしたくなかった。

「彼に相談したらいいんじゃないの？」
「そうね」

返事はしたものの、柚葉はあまり気乗りがしない。
無言電話が続くようになってすぐ、柚葉も涼に相談しようと考えた。
しかし、日々のメッセージからも涼の忙しさは充分伝わってきていて、これ以上負担になりたくなくて言い出せないでいた。

「あんまり一人で抱え込んではダメよ」
「うん、ありがとう」