君ともう一度、 恋を始めるために
京都へ着いたものの涼には土地勘もなく、友人であり柚葉との関係も知る望月恭介に助けを求めた。

「本当に行くのか?」
「ああ、他に方法がないからな」

柚葉が勤めていたバイト先はすでに辞めていた。
どうやら実家に帰るらしいと聞いてすぐに下関に向かおうとする涼に、恭介は驚いた顔をする。

「柚葉ちゃんはもうお前に会いたくないんじゃないのか?」
「それは・・・」

どんなときにも自信満々な顔をしていろと父に教えられて育った。
ビジネスの場ではそれが功を奏してきた。
しかし、柚葉に関しては自身なんて一つもない。
だからこそ、行動あるのみ、涼はもう諦めないと決めた。

「とにかく、下関に向かってみる」
「そうか、わかった」

今はほかに方法がないんだという涼に、恭介は複雑な表情で見送ってくれた。

< 30 / 203 >

この作品をシェア

pagetop