君ともう一度、 恋を始めるために
「いらっしゃいませ」

次に入って来たのは大学生らしき二人連れカップル。
風見鶏は京都の中心にありながら近くには大学がいくつか点在し、周辺には緑も多く比較的静かな場所。
だからだろうか、お客さんは観光客よりもサラリーマンや地元の学生が多い。
3年前たまたまここにやってきた柚葉は、この街の雰囲気が一目で気に入ってしまった。
それはきっと、大学時代を過ごした思い出の街に似ていたからだろう。

「コーヒーとミルクティーをお願いします」
「はい」

山口県の下関で生まれ育った柚葉は大学進学で大阪に移り住んだ。
小さな小さな1LDkのアパートは生活費節約の為だったけれど、街の雰囲気と近くに点在する古書街が気に入って決めた。
当然のように、バイトは書店併設のカフェ。
そこで知り合ったのが涼だった。
< 9 / 203 >

この作品をシェア

pagetop