Good day ! 4【書籍化】
「どれくらいかかるんでしょう」
「そうだな。風が強ければすぐに雷雲も流れてくれるが、今日はそこまで強風でもない。1時間ほどかかるかもな」
「はい。でもランディングのあとでよかったです」
「確かに。空の上は大渋滞だろうな」
管制官も大わらわで、空港周辺の飛行機をさばくのに必死だろう。
パイロットも、燃料を気にしつつルートの変更を余儀なくされているはずだった。
「キャビンの様子が気になります。CAさんたち、大変ですよね」
「ああ。こまめに様子を聞いて、必要であれば再度PAを入れよう」
「了解です」
そんなことを話していると、コックピットのドアがノックされた。
「佐々木です。お飲物をお持ちしました」
「はい、今開けます」
恵真が立ち上がって、ドアを開けに行く。
「佐々木さん、お気遣いいただいてありがとうございます。キャビンの様子はどうですか?」
コーヒーを受け取りながら恵真が尋ねると、佐々木はにこやかに答えた。
「比較的落ち着いていますよ。今日はインファントもゼロで大人の方が多いですし、無事に着陸出来ただけでもありがたいと。搭乗前に、ダイバートやエアターンバックの可能性もアナウンスされていましたから」
「それならよかったです。何かあれば、すぐにお知らせくださいね」
「かしこまりました」
佐々木が出て行くと、二人でコーヒーを飲みながら空を見上げる。
「わっ、すごい稲妻」
ピカッと光ったあと、ドーンと地響きも轟いた。
「翼と舞、怖がってないかな」
恵真がぽつりと呟くと、大和はそっと恵真の手を握る。
「大丈夫だ。翔一くんや美羽ちゃん、それに先生たちもいてくれる」
「ええ。でも特に舞は雷が苦手だから……」
「翼もそれは分かってて、きっといつもみたいに、怖くないよって舞を励ましてるさ」
「そうですね」
そうは言ってみたものの、やはり恵真は気がかりだった。
(もし私が仕事をしていなかったら、こんな時ずっと二人のそばにいてあげられたのに)
先日、舞と一緒に出かけたことを思い出す。
あんなにも楽しそうにしていた舞。
もしかしたら、普段寂しさを我慢していた反動なのかもしれなかった。
(私が毎日一緒にいられたら、舞は今よりもっと笑顔でいられたのかな?)
そう思った途端、涙が込み上げてきて懸命に堪える。
「恵真? どうした?」
大和が心配そうに顔を覗き込んできた。
「何でもないです。仕事中にすみません」
慌てて顔を背けて、さり気なく目尻を拭う。
「恵真、今この状況で俺たちパイロットに為す術はない。それにコーパイの様子を気にするのはキャプテンの義務だ。話して」
「でも、仕事には関係ないので」
「あるよ。恵真のことだ。パイロットをやっていなければ、もっと子どもたちと一緒にいられたのにって思ったんじゃないか?」
えっ、と恵真は思わず顔を上げる。
大和が優しい眼差しでじっと見つめていた。
「そうだな。風が強ければすぐに雷雲も流れてくれるが、今日はそこまで強風でもない。1時間ほどかかるかもな」
「はい。でもランディングのあとでよかったです」
「確かに。空の上は大渋滞だろうな」
管制官も大わらわで、空港周辺の飛行機をさばくのに必死だろう。
パイロットも、燃料を気にしつつルートの変更を余儀なくされているはずだった。
「キャビンの様子が気になります。CAさんたち、大変ですよね」
「ああ。こまめに様子を聞いて、必要であれば再度PAを入れよう」
「了解です」
そんなことを話していると、コックピットのドアがノックされた。
「佐々木です。お飲物をお持ちしました」
「はい、今開けます」
恵真が立ち上がって、ドアを開けに行く。
「佐々木さん、お気遣いいただいてありがとうございます。キャビンの様子はどうですか?」
コーヒーを受け取りながら恵真が尋ねると、佐々木はにこやかに答えた。
「比較的落ち着いていますよ。今日はインファントもゼロで大人の方が多いですし、無事に着陸出来ただけでもありがたいと。搭乗前に、ダイバートやエアターンバックの可能性もアナウンスされていましたから」
「それならよかったです。何かあれば、すぐにお知らせくださいね」
「かしこまりました」
佐々木が出て行くと、二人でコーヒーを飲みながら空を見上げる。
「わっ、すごい稲妻」
ピカッと光ったあと、ドーンと地響きも轟いた。
「翼と舞、怖がってないかな」
恵真がぽつりと呟くと、大和はそっと恵真の手を握る。
「大丈夫だ。翔一くんや美羽ちゃん、それに先生たちもいてくれる」
「ええ。でも特に舞は雷が苦手だから……」
「翼もそれは分かってて、きっといつもみたいに、怖くないよって舞を励ましてるさ」
「そうですね」
そうは言ってみたものの、やはり恵真は気がかりだった。
(もし私が仕事をしていなかったら、こんな時ずっと二人のそばにいてあげられたのに)
先日、舞と一緒に出かけたことを思い出す。
あんなにも楽しそうにしていた舞。
もしかしたら、普段寂しさを我慢していた反動なのかもしれなかった。
(私が毎日一緒にいられたら、舞は今よりもっと笑顔でいられたのかな?)
そう思った途端、涙が込み上げてきて懸命に堪える。
「恵真? どうした?」
大和が心配そうに顔を覗き込んできた。
「何でもないです。仕事中にすみません」
慌てて顔を背けて、さり気なく目尻を拭う。
「恵真、今この状況で俺たちパイロットに為す術はない。それにコーパイの様子を気にするのはキャプテンの義務だ。話して」
「でも、仕事には関係ないので」
「あるよ。恵真のことだ。パイロットをやっていなければ、もっと子どもたちと一緒にいられたのにって思ったんじゃないか?」
えっ、と恵真は思わず顔を上げる。
大和が優しい眼差しでじっと見つめていた。