Good day ! 4【書籍化】
「恵真はあの子たちにとって、最高の母親だ。俺が保証する。妊娠も出産も、パイロットのキャリアには大きく影響するのに、恵真は子どもたちの為に飛ばない選択をしてくれた。今だって、乗務日数を8割に抑えている。それがなければ、今頃恵真は機長昇格訓練に入っていたはずだ」
「えっ! そんなことは……」
「いや、恵真の実力なら間違いなくそうなっていた。俺が知る限り、こんなにも優秀なコーパイはいない。だけど恵真は、いつだって翼と舞を最優先してくれている。自分のキャリアなんて気にもしないでね。その気持ちは必ずあの子たちにも伝わっている。自分たちはお母さんに愛されていると。父親として、恵真の夫として、俺はそう断言する」
「大和さん……」

恵真の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「私、あの子たちを寂しがらせてたんじゃないかって、不安だったの。 家族旅行にも連れて行ってあげられないし、雷が鳴っても大丈夫って抱きしめてあげられない。働いていないお母さんはいつも一緒にいてあげられるし、子どもが悩んだり落ち込んでいたら、すぐに気づいてあげられる。だから舞は……。先週私と出かけた時、舞があんなに嬉しそうだったのは、普段寂しい思いをしているからじゃないかって、私……」

恵真、と大和が優しく名を呼ぶ。

「あの子たちは大丈夫だ。翼も舞も、保育園で色んなことを吸収してぐんぐん成長している。友だちや先生と過ごすことで、大切なことを学んでいる。うちに帰れば、優しいお母さんがいてくれる。それに恵真は、ちゃんと舞の気持ちに寄り添っていられたじゃない。二人で帰って来た時の舞の表情を見ればすぐに分かった。抱えていた気持ちを、恵真が全部受け止めてくれたんだって。俺は恵真を心から尊敬する。ありがとう、恵真。翼と舞のお母さんでいてくれて。いつも俺のそばにいてくれて」
「大和さん……」

大粒の涙をこぼす恵真を、大和は右手でそっと抱き寄せた。

「恵真は俺たち家族を幸せにしてくれる太陽だよ。みんな恵真が大好きだ。それだけは忘れないで。いい?」
「はい」
「よし。あとは俺が恵真をもっと幸せにしなきゃな。恵真、明日ってオフか?」
「え? はい、そうですけど」

キョトンと顔を上げると、大和は何やらニヤリと笑う。

「明日は俺、千歳ステイだからショーアップは17時なんだ。朝、保育園に子どもたちを送って行ったら、そのまま二人でデートな」

途端に恵真の顔は真っ赤になる。

「キャプテン、あの、コックピットでなんてことを……」
「早く返事しないと何度でも言うぞ? 明日はデート、恵真とデー……」
「わ、分かりましたから!」

よし、と大和はほくそ笑み、早速何やら考え始めた。
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