Good day ! 4【書籍化】
「恵真、お疲れ様。コーヒー淹れるよ」
思い出いっぱいの卒園式が終わり、夜になると翼と舞はいつもより早くベッドに入った。
静かになったリビングで、恵真は大和とソファに並んで座る。
「私、最後の最後でやっと保育園のありがたさに気づけました」
大和の肩にそっと身体を寄せて、恵真は言葉を噛みしめながら話し出す。
「私一人で子育てしたのでは、二人はあんなにも成長出来なかったかもしれない。私が勝手に、ずっとそばにいてあげた方があの子たちにとって幸せなのにって、決めつけていたんです。でも今日の二人の姿を見て、保育園でどんな毎日を過ごしていたか、どんなに貴重な日々を送っていたのか、ようやく分かった気がします。特に舞には、寂しい思いをさせて申し訳ないって思っていたけど、あの子はちゃんと毎日を生き生きと過ごしていたんだなって。どうしてもっと信じてあげなかったんでしょう」
大和はそんな恵真の頭を抱き寄せた。
「翼と舞が保育園での生活を楽しめたのは、帰るべき温かい場所があったからだよ。朝、保育園で別れても、必ずお母さんが笑顔で迎えに来てくれる。うちに帰ればたくさん抱きしめてくれる。だから二人は安心して、保育園で楽しく過ごすことが出来たんだ。全部恵真のおかげなんだよ」
「大和さん……」
恵真は目を潤ませる。
「ね、恵真。あの子たちの名前の由来、覚えてる?」
「翼と、舞の?」
「そう。自分の翼で大きくのびのびと羽ばたく子に。舞うように生き生きと人生を輝かせる子に。その通りになったと思わない?」
「ええ」
笑いかける大和に、恵真は涙を堪えながら頷いた。
「すごいよな、子どもって。大人の何倍も色んなことを吸収して、毎日どんどん成長していく。まだ6歳だぞ? 俺たちも負けていられない。だろ?」
「はい」
泣き笑いの表情で大和を見上げてから、恵真は「あ!」と思い出した。
「大和さん、卒園式でもらった作品集、まだ見てなかったです」
「お、そうだった」
バッグに入れたままの作品集を取り出し、ドキドキしながら二人でページをめくる。
最初に描かれていたのは、翔一と美羽と一緒の、仲良く手を繋いだ4人の似顔絵。
翔一は口を大きく開けた笑顔で、美羽はピンクの洋服で愛らしく描かれていた。
「ふふっ、可愛い」
「ああ。翼の絵は豪快で、舞の絵は繊細だな。二人とも、特徴をよく捉えてる」
「そうですね」
次のページは、家族4人の似顔絵。
その下に『おとうさん おかあさん ありがとう』とクレヨンで書かれていた。
「わあ、嬉しい! 私たちの宝物ですね」
「そうだな。大切にとっておこう」
更にページをめくると、そこには……
「えっ、これって」
にっこり笑った制服姿の将来の自分と飛行機の絵。
翼の似顔絵に添えられた文字は
『おとうさんとおなじ パイロットになります』
そして舞の似顔絵には……
『おかあさんみたいな パイロットになりたいです』
恵真はハッと息を呑んだ。
(舞、まさか、こんな……)
恵真、と呼ぶ大和の目にも涙が浮かぶ。
「舞、ちゃんと見てたんだな、恵真の背中を」
「本当に? だって私、あの子に何も……」
「伝わってたんだ。恵真の想いも、かっこいい生き方も。恵真は舞の憧れで、道しるべなんだよ」
「私が、あの子の?」
恵真の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「ああ、そうだ。舞は心の中で決めたんだろうな、進むべき道を。恵真の姿を見て、将来の夢を見つけられたんだ。恵真は舞にとって、最高のお母さんだよ」
大和は笑顔で恵真の瞳を見つめる。
「俺もがんばらなきゃな。翼に憧れてもらえるように」
「大和さんは、いつだって私の憧れです」
「じゃあこれからも、恵真と翼と舞の憧れでいられるように、俺はみんなに誰よりも大きな背中を見せるよ」
「はい。私もがんばります」
「ああ。あの子たちが力をくれる。俺たちは4人で一緒に、お互いを高めていける家族だ」
「はい!」
ようやく笑顔になった恵真に、大和も力強く頷いてみせた。
思い出いっぱいの卒園式が終わり、夜になると翼と舞はいつもより早くベッドに入った。
静かになったリビングで、恵真は大和とソファに並んで座る。
「私、最後の最後でやっと保育園のありがたさに気づけました」
大和の肩にそっと身体を寄せて、恵真は言葉を噛みしめながら話し出す。
「私一人で子育てしたのでは、二人はあんなにも成長出来なかったかもしれない。私が勝手に、ずっとそばにいてあげた方があの子たちにとって幸せなのにって、決めつけていたんです。でも今日の二人の姿を見て、保育園でどんな毎日を過ごしていたか、どんなに貴重な日々を送っていたのか、ようやく分かった気がします。特に舞には、寂しい思いをさせて申し訳ないって思っていたけど、あの子はちゃんと毎日を生き生きと過ごしていたんだなって。どうしてもっと信じてあげなかったんでしょう」
大和はそんな恵真の頭を抱き寄せた。
「翼と舞が保育園での生活を楽しめたのは、帰るべき温かい場所があったからだよ。朝、保育園で別れても、必ずお母さんが笑顔で迎えに来てくれる。うちに帰ればたくさん抱きしめてくれる。だから二人は安心して、保育園で楽しく過ごすことが出来たんだ。全部恵真のおかげなんだよ」
「大和さん……」
恵真は目を潤ませる。
「ね、恵真。あの子たちの名前の由来、覚えてる?」
「翼と、舞の?」
「そう。自分の翼で大きくのびのびと羽ばたく子に。舞うように生き生きと人生を輝かせる子に。その通りになったと思わない?」
「ええ」
笑いかける大和に、恵真は涙を堪えながら頷いた。
「すごいよな、子どもって。大人の何倍も色んなことを吸収して、毎日どんどん成長していく。まだ6歳だぞ? 俺たちも負けていられない。だろ?」
「はい」
泣き笑いの表情で大和を見上げてから、恵真は「あ!」と思い出した。
「大和さん、卒園式でもらった作品集、まだ見てなかったです」
「お、そうだった」
バッグに入れたままの作品集を取り出し、ドキドキしながら二人でページをめくる。
最初に描かれていたのは、翔一と美羽と一緒の、仲良く手を繋いだ4人の似顔絵。
翔一は口を大きく開けた笑顔で、美羽はピンクの洋服で愛らしく描かれていた。
「ふふっ、可愛い」
「ああ。翼の絵は豪快で、舞の絵は繊細だな。二人とも、特徴をよく捉えてる」
「そうですね」
次のページは、家族4人の似顔絵。
その下に『おとうさん おかあさん ありがとう』とクレヨンで書かれていた。
「わあ、嬉しい! 私たちの宝物ですね」
「そうだな。大切にとっておこう」
更にページをめくると、そこには……
「えっ、これって」
にっこり笑った制服姿の将来の自分と飛行機の絵。
翼の似顔絵に添えられた文字は
『おとうさんとおなじ パイロットになります』
そして舞の似顔絵には……
『おかあさんみたいな パイロットになりたいです』
恵真はハッと息を呑んだ。
(舞、まさか、こんな……)
恵真、と呼ぶ大和の目にも涙が浮かぶ。
「舞、ちゃんと見てたんだな、恵真の背中を」
「本当に? だって私、あの子に何も……」
「伝わってたんだ。恵真の想いも、かっこいい生き方も。恵真は舞の憧れで、道しるべなんだよ」
「私が、あの子の?」
恵真の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「ああ、そうだ。舞は心の中で決めたんだろうな、進むべき道を。恵真の姿を見て、将来の夢を見つけられたんだ。恵真は舞にとって、最高のお母さんだよ」
大和は笑顔で恵真の瞳を見つめる。
「俺もがんばらなきゃな。翼に憧れてもらえるように」
「大和さんは、いつだって私の憧れです」
「じゃあこれからも、恵真と翼と舞の憧れでいられるように、俺はみんなに誰よりも大きな背中を見せるよ」
「はい。私もがんばります」
「ああ。あの子たちが力をくれる。俺たちは4人で一緒に、お互いを高めていける家族だ」
「はい!」
ようやく笑顔になった恵真に、大和も力強く頷いてみせた。