Good day ! 4【書籍化】
二人の道しるべに
月日は穏やかに流れて行く。
伊沢は次のラインチェックを見事にパスし、無事に機長に昇格した。
こずえも同じ頃に機長昇格を果たす。

次いで1年後、恵真も37歳で日本ウイング航空初の女性機長となった。
オフィスで部長から直々に辞令が交付される。

「おめでとう! 藤崎くんの肩章が4本ラインになるのを見届けられて、心から嬉しいよ。私は来年退職するけど、佐倉夫妻で飛ぶフルムーンフライトにはぜひとも乗せてくれ。楽しみにしているよ」
「はい、ありがとうございます」

広報課の川原も早速JWAの公式SNSを更新。

お客様から
『おめでとうございます! 佐倉 恵真キャプテン』
『夫婦パイロットから夫婦キャプテンになりましたね』
『お二人のフルムーンフライトを楽しみにしています』
と、祝福のコメントが相次いだ。

翼と舞もすくすくと成長し、小学6年生に進級した。

「舞、Good day! ごっこやろう」
「うん!」
「じゃあ、俺からな。J Wing two-four-one. Contact Departure one-two-zero decimal eight. Good day!」
「Contact Departure one-two-zero decimal eight. J Wing two-four-one. Good day!」

そうやって管制官とのやり取りを真似する二人に、大和は「リアル過ぎて思わず応答しそうになる」と苦笑いする。

将来の夢も変わらないらしく、卒業アルバムに載せる文集にも、パイロットを目指す想いをしっかりと綴った。

中学に入ると独学で勉強を始め、翼も舞も15歳にして航空無線通信士の資格を取得してみせた。
部活も、翼はサッカーを、舞は吹奏楽部を選んで、仲間と力を合わせて取り組むことの大切さを学ぶ。

「お母さん、知ってる? 日本ウイング航空の職員で、音楽隊を結成してるんだって。制服姿で演奏するのよ。私もいつか、パイロットとしてその音楽隊にも入れたらなあ」

舞にそう言われた恵真は、そんなことまで考えてるの?と驚いた。

高校は二人仲良く同じ公立の普通科を選び、進路の面談では「4年制大学に進学して、2年生になったら航空大学校の入試を受ける」と担任の先生に話す。

「えっ、 編入するの? それなら最初から航空大学校を受けたら?」

困惑する先生に翼と舞は、航空大学校は高卒では受けられない、4年制大学の2年生の時に出願資格を得られる、と逆に説明していた。

恵真も大和も、進路については二人の意思を尊重する。

「自分の人生なのだから、自分の足でしっかり歩いて行きなさい」

それだけを伝えて、温かく見守った。

やがて翼は理工学部に、舞は外国語学部のある大学に進学する。
一般教養を学び、のびのびとサークルやアルバイトを楽しんで視野を広げた。

そしていよいよ、夏に航空大学校の受験を控えた大学2年生に進級した。
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