蛍火のような恋だった

「……あんたさ、まじノリ悪すぎ」

だれにも聞こえないように、私に言う。


前川さんの言葉には、何も返さなかった。

ただ、スカートの裾を握って、行き場のない気持ちをぶつけるしかできなかった。


✳︎

「ごめん蛍、ちょっとトイレ行きたいんだけど、これお願いしていい?」

「うん、いいよ」

移動授業に向かう途中、トイレに行った彩綾ちゃんの荷物を受け取り、私は廊下の壁に背を預けて彩綾ちゃんを待っていた。

と、廊下の掲示板に貼られているポスターが視界にはいった。

「……七夕祭り」

ポスターに大きく書かれた文字を、ぽつりと口にする。

"彼氏と夏祭りデート"

やりたいことリストに書いた文章を思い出す。

残りの時間を自由に、楽しむためにあのリストを作ったはずだった。

それなのに、作ったことが達成できないと、自分と他人の違いを勝手に感じて。

作ったものが達成できれば、どんどん欲張りになる自分がいる。

心残りなく死ぬために作ったものが、今は生きる希望になってしまっていた。

「あんな物、最初から作らなきゃよかったかな…」

結局、私は最初から生きる理由のために、リストを作っていたのかもしれない。



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