幼なじみに溺れました

夜の距離感



ーーー



 

その日の夜

ベッドに寝転びながらスマホをいじっていた凛の画面が突然光った

 

着信

【一ノ瀬 凪】

 

一瞬固まる

正直…出たくない

でも無視してもしつこく鳴り続けるのは分かってる

 

ため息をついて通話ボタンを押した

 

「…なに?」

 

「出んのおせーよ」

 

「夜にかけてくるとか非常識すぎない?」

 

「お前 出なかったら家まで行こうと思ってた」

 

「は!?ふざけないで!」

 

凪は軽く笑った

 

「冗談だって」

 

「全然冗談に聞こえないんだけど」

 

「で 何してんの?」

 

「別に…寝ようとしてたけど?」

 

「じゃあ寝かせないわ」

 

「は!?意味わかんないし!」

 

ベッドの上で思わず声が大きくなった

でも どこか声がうわずってる自分にも気付いていた

 

「ほんとにさ こうやって毎日絡んで何が楽しいの?」

 

「面白いって言ってんだろ」

 

「他にもっと暇つぶせる子いっぱいいるじゃん 女の子とか」

 

「興味ねーし」

 

「…は?」

 

「お前がいい」

 

「……は???」

 

一瞬言葉が出なかった

耳が熱くなる

 

「いや そ、そういう軽いのほんと無理だから!」

 

「軽くねーけど」

 

「うそばっか!」

 

凪はまた軽く笑っただけで
それ以上何も言わない

妙に静かな空気が通話越しに流れる

 

心臓がバクバクしてるのはスマホ越しにはバレない

そう思いながらも

自分の顔が真っ赤になってるのがわかっていた

 

「もう切るから」

 

「おやすみ」

 

「…おやすみ」

 

通話を切ったあと
画面を伏せたまましばらく動けなかった

 

(ほんと 何なの)

 

どんどんわからなくなる

 

イラつくのに

ムカつくのに

ドキドキするのが止まらなかった

 

ーーー

 
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