幼なじみに溺れました
ふたりきり
ーーー
凛は内心ずっと落ち着かなかった
なんでこんな流れになってるのか自分でもわからないまま
凪と並んで歩いてる
駅前の小さなファミレスに入ると
適当に奥の席に案内された
「ここでいい?」
「…うん」
凪は慣れた動きでメニューを開いた
凛はメニューを持つ手がなんだか少し震えているのを自覚してた
「何食う?」
「え…普通のでいい」
「普通って何だよ」
「パスタとか」
「じゃ パスタな んで俺はこれにすんべ」
店員に注文を済ませると
凪は腕を組んでじっと凛を見たまま黙った
その沈黙が嫌だった
「…何?」
「いや」
「いやって何よ」
「顔真っ赤」
「は?なってないし」
「なってる」
凛は思わず手で自分の頬を覆った
「ほんといちいち意地悪なんだけど」
「楽しいから」
「もうさ…」
「ん?」
「なんでそんなに絡んでくるの?前からずっと思ってたけど」
「…」
「別に私 他の子たちみたいにキャーキャー言ってるわけでもないし」
「だから面白いんだよ」
「は?」
「お前 他の女子と反応が違うから」
凪は口角だけ上げた
「無理して我慢してんの 丸わかり」
「我慢なんかしてないし」
「嘘下手」
ドリンクが届いて沈黙が落ちる
その間も凪はじっと凛を見てくる
それがまた心臓に悪い
(何なのほんと…この人)
しばらくして料理が運ばれてきた
凪は普通に食べ始める
「食えよ?」
「うん…」
普通に食事してるだけなのに
どんどん自分だけ変に緊張してくる
心臓の音だけが無駄に響いてる気がした
「…こうして二人で飯行くのも悪くねえだろ?」
「別に…」
「嫌なら来てねえだろ」
「だって…無理矢理だったじゃん」
「断るのは自由だったけど?」
そう言われると
何も返せなくなる
たしかに
断れなかったのは自分だった
「…ほんと性格悪い」
「褒めてんだろ?」
「褒めてない!」
凪はまたニヤッと笑ったまま食事を続けていた
凛はもう 自分の鼓動がバクバクしてるのをごまかせなくなってきていた
(…ほんと 意味わかんない)
でも
少しだけ
この時間が嫌じゃないって思ってる自分がいた
ーーー