幼なじみに溺れました
ねじれていく空気
ーーー
それは突然だった
昼休み 教室の後ろの方でざわざわと声が上がった
「え マジで?ほんとに?」
「まさかじゃない?」
「でも写真あったって」
不穏な空気が広がっていくのを凛は肌で感じていた
沙耶がすぐに小声で囁いてくる
「…なんか騒がしくない?」
「…うん」
そしてついに 女子たちのリーダー格が凛の机にわざわざ近づいてきた
「凛ちゃん」
「…何」
「知らなかった?凪くんって 他の子とも普通に遊んでるんだよ?」
「…は?」
「昨日ね 先輩と二人でゲーセンいたって」
「……」
「しかも その先輩のストーリーにチラッと映ってたんだよね 凪くん」
わざとスマホの画面をチラ見せしてくる
ほんの数秒映っただけの凪の後ろ姿
でもそこに寄り添う女子の姿も確かに映っていた
「……別に…」
「別に?」
「付き合ってるわけじゃないし 何してようが私に関係ないし」
「そっかぁ ならいいんだけど」
わざとらしい笑顔が逆に胸に刺さった
沙耶がすぐに隣から囁く
「気にしなくていいって 凪くんそういう奴じゃん ずっとそうだったんでしょ」
「…わかってる」
わかってるはずなのに
胸の奥がズキズキと痛んだ
(別に私は…何とも思ってない)
(…はずなのに)
放課後
教室を出ようとした時も
当たり前みたいに凪が隣に立っていた
「今日疲れてね?」
「別に」
「嘘」
「ほんとに別に」
歩きながらもしばらく沈黙が続いた
凪はちらっと横目で凛を見たまま小さく口を開く
「今日の噂 聞いた?」
「……うん」
「気にしてんの?」
「気にしてないってば」
凪はわずかに口角を上げた
でも今日はニヤつきじゃなかった
「ほんとに?」
「ほんとに!」
「……」
「私には関係ないから」
「へえ」
しばらく無言で歩いたあと
凪がぽつりと呟いた
「じゃ もし俺がほんとに他の女と遊んでたら どうする?」
「……は?」
「気になんねーの?」
「…気にしないし!」
「強がんの下手すぎ」
「ほんとに気にしてない!」
自分でも声が上ずってるのがわかった
それが余計に悔しかった
「ふーん」
凪は小さく笑ったまま そのまま何も言わずに前を歩き出した
凛は俯いたまま
震える手で制服の袖をぎゅっと握りしめていた
(…意味わかんない…)
(……苦しい)
ーーー