幼なじみに溺れました
決定打の罠
ーーー
それは放課後の下駄箱で突然起きた
「ねえ 凛ちゃん」
振り返ると 例の女子グループがまた揃って立っていた
今日はいつもと違って妙に落ち着いたトーンで話しかけてくる
「さっきね 凪くんと話してたんだ」
「……は?」
「ねえ凛ちゃん ほんとに知らないの?」
「何を」
「凪くん 先輩と付き合ってるよ?」
「……は?」
「昨日も会ってたって本人言ってたし」
「……」
「凛ちゃんのことはただのクラスの子って ちゃんと言ってたよ?」
ズキッと胸が痛んだ
瞬間的に視界が揺れた気がした
「そんなの嘘…」
「嘘じゃないよ」
女子の一人がスマホを差し出してくる
そこにはまたストーリーのスクショ
凪の腕にそっと触れて寄り添う先輩の姿が映っていた
もちろん凪の顔ははっきり映っている
「……」
頭が真っ白になった
「…関係ないし」
必死に言葉を吐き出した
「もう放っておいてよ」
女子たちは満足そうにニヤッと笑っただけだった
「ふーん 強がり?」
「ま もう諦めた方が楽だと思うけどね」
そのままヒールの音を鳴らして去っていく
沙耶が急いで駆け寄ってきた
「大丈夫!?聞こえてた!」
「…大丈夫」
「嘘」
「…ほんとに大丈夫だから」
目の奥が熱くなるのを必死で堪えていた
(やっぱり…)
(結局…私は特別なんかじゃなかったんだ)
(遊ばれてただけ)
次の日も
凪は変わらず当たり前のように隣に座って話しかけてきた
「おはよ」
「……」
「今日機嫌悪い?」
「別に」
「ほんと?」
「別にって言ってるでしょ」
凪はそれ以上何も言わずにじっと見つめてきた
凛は視線を合わせず ノートを開いて無理矢理集中しようとした
もうこれ以上振り回されたくなかった
もう期待したくなかった
でも
その心の奥でぐちゃぐちゃに絡まった感情は
全然整理できないままだった
ーーー