幼なじみに溺れました

溢れ出す寸前


ーーー

 

次の日の放課後

凛は今日もできるだけ早く帰ろうと早足で校舎を出た

でも分かってた

また凪が待ってることも

そして今日もやっぱり そこに凪は立っていた

 

「…また?」

 

「うん」

 

「なんで毎回待ってるの」

 

「お前が逃げるから」

 

「逃げてない!」

 

「めちゃくちゃ逃げてんじゃん」

 

凪は軽く笑いながら隣に並ぶ

もう何度この光景を繰り返してるかわからない

でも今日は少しだけ違っていた

 

「なあ 凛」

 

「…何」

 

「もう限界じゃね?」

 

「何が」

 

「お前の中 身バレそうなくらい溢れてるけど」

 

「…意味わかんない」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとだってば!」

 

足が自然と止まる

心臓の音が煩わしいくらい響いてるのが自分でもわかった

 

凪がゆっくりと凛の前に立った

すっと腕を伸ばして

指先で凛の頬を軽く撫でる

 

「…っ なにしてんの…」

 

「赤いな」

 

「やめて…」

 

「嘘つくの もう無理だろ?」

 

「…やだって言ってる…」

 

「お前 自分がどうなってるかわかってんの?」

 

「わかんない!!」

 

凪はニヤリとすらせず
ただ静かに目を細めた

 

「俺はさ」

 

「…」

 

「お前がずっと苦しそうにしてんの わざと放っといた」

 

「……は?」

 

「どうせ逃げられないのに 無理に逃げようとすんの面白かったから」

 

「……っ」

 

「でももういい加減 追い詰めたくなってきた」

 

「……やめて」

 

「やめねーよ」

 

ゆっくりと顔を近づけられる

すぐ目の前で凪の呼吸が触れそうだった

 

「俺のこと好き?」

 

「…っ…ちが…」

 

「違うなら言え」

 

「……っ」

 

喉が詰まって何も出てこない

 

「な?」

 

「……」

 

「ほら やっぱバレバレ」

 

そのまま凪は軽く口元だけ笑って
ゆっくりと距離を戻した

 

「また明日な」

 

鞄を片手に 軽く手を振って歩き去っていく背中を

凛はその場から動けないまま見つめ続けていた

 

(ほんとに…もう無理だ)

(でも…認めたくない)

(だって…)

(私が認めたら…もう戻れなくなる気がして)

 

ーーー

 
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