幼なじみに溺れました
限界突破の夜
ーーー
次の日の夜
凛はスマホの画面を何度も確認していた
凪からのLINEは さっきから既読のまま返事がなかった
珍しい
こんなこと 今までなかった
(別に 何とも思ってないし…)
(既読無視なんて…普通だし…)
(……なのに)
心臓がドクドクと早鐘を打つ
何も考えたくないのに
勝手に色んな不安が浮かんでくる
そこに突然 結愛からLINEが届く
【さっきさ 駅前のカフェで凪くん見たよ】
【女の子といた】
瞬間
血の気が引くのがわかった
(…また?)
(…ほんとに いつもそう)
頭の奥でぐるぐる回り出す思考を止められなかった
【あれ 先輩じゃないかなって言ってた子】
【やっぱ付き合ってるのかな】
スマホを握る手が震えた
胸がギュッと締め付けられて息苦しくなる
(私…何やってるんだろ)
(結局…遊ばれてただけ)
涙が滲みそうになった
ーーー
翌朝
教室に入ると すでに凪は席に座っていた
でも今日は目が合わない
当たり前みたいに話しかけてくる凪が
今日は黙ったままだった
その沈黙が 逆に心臓を締め付けてくる
昼休みになっても
帰りのHRが終わっても
凪は一切声をかけてこなかった
帰り道
昇降口を出たところで
ついに堪えきれず凛は声をかけた
「…凪」
凪はゆっくり振り返った
「なに」
「…なんで今日…何も話しかけてこないの」
「別に」
「…昨日 どこ行ってたの」
「なんで」
「…見たって」
「……」
凪は何も言わず 少しだけ目を細める
「遊んでただけだよ」
「……」
「別に俺 彼女でもない奴に説明する義理なくね?」
「……っ」
ズドンと胸の奥に落ちた
目の奥が熱くなる
「そっか…」
「俺は お前のなんなんだよ?」
「…知らない」
「ほんとに?」
「もう…わかんない!」
声が震えた
ついに涙が溢れそうになる
でもそれを隠すように顔を背けた
「ほんと…最低」
「うん 最低だな」
凪は小さく吐き捨てるように言ったあと
すっと手を伸ばして凛の顎を軽く持ち上げた
「でもそれで泣くのお前だけだよな」
「……っ」
「なあ もう認めれば?」
「…認めたら 楽になる?」
「楽になる」
「でも怖い」
「俺が逃げねえって言ったら?」
「……ほんと?」
凪はゆっくり微笑んだ
今までと違う優しい目で
「ほんと」
その瞬間
今まで張り詰めていた何かが ぷつんと切れた気がした
(ああ もう…無理だ)
凛はやっと自分の気持ちを
逃げられなくなった
ーーー