幼なじみに溺れました
第3章

交差する気持ち


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第三章 開幕 交差する気持ち

 

それから数日が経った

凛はようやく少しだけ気持ちの整理がつきかけていた

いや 正しくは
「認めてしまった以上 逃げ場がなくなった」

というだけだった

 

凪は相変わらず当たり前のように隣に座り
今まで通りに声をかけてくる

むしろ 前よりもさらに自然に距離が近い

 

「最近 素直になったな」

 

「別に…」

 

「前なら全力で否定してただろ?」

 

「…うるさい」

 

凪は口元を緩めたまま ゆるく笑っていた

でも凛の胸の中は まだまだグチャグチャだった

 

(好き…なのかな)

(…いや もう好きなんだと思う)

(でも でも…)

(この人は どこまで本気なの…?)

 

ずっと そこだけが引っかかったまま

完全に信じ切れないでいた

 

そんな時だった

新しいクラスの実行委員が決まることになった

クラスの女子がわざとらしく手を挙げる

 

「凪くん 実行委員やりなよ!」

 

「俺はいいって」

 

「いや 凪くんしかいないよ!一緒にやりたいって先輩たちも言ってたよ?」

 

(先輩たち…)

また胸の奥がざわつく

 

「じゃあ 代わりに凛ちゃんもやりなよ」

今度は女子たちがこちらに視線を向けてきた

 

「え 私はいいよ…」

 

「凪くんと一緒なら楽しいと思うけど?」

 

「ほんとやめてってば」

 

女子たちはニヤニヤしながら去っていった

その嫌味な空気を感じながら
凛は思わず凪の方をチラッと見た

 

「お前らほんと暇だな」

凪は苦笑いしていた

でも その目の奥はどこか冷めた光を宿していた

 

「…ほんとにさ」

凛はぽつりと呟いた

 

「凪って いつもこうやって絡んでくるけど…」

 

「ん?」

 

「何考えてんの?」

 

凪は一瞬だけ黙ってから ゆるく笑った

 

「お前のこと考えてんだよ」

 

「…ほんと?」

 

「ほんとだよ?」

 

「…昔から そうだった?」

 

「昔?」

 

ふと 凛の中にずっとぼんやりしてた”幼馴染の記憶”の霧が
一瞬だけ揺れた

 

でもそれはまだ
はっきり繋がらなかった

 

「いや…なんでもない」

 

「ん?」

 

「別に なんでも」

 

凪はそれ以上何も言わず
静かに微笑んでいた

 

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