幼なじみに溺れました
第5章

独占の始まり



ーーー


 

凪と正式に付き合い始めてから数日

凛の中では幸せと緊張がずっと入り混じっていた

 

(正式に彼女になった…)

(なのに…なんでまだ周りの視線がこんなに重たいの)

 

女子たちの噂はさらに加速していた

 

「凛ちゃんって結局そういう子だったんだね」

「なんか裏で結構仕掛けてたとか聞いたよ?」

「計算高いって有名だったらしいよ」

 

直接は言ってこないけど
陰でのヒソヒソは前より悪質になっていた

 

沙耶が隣でため息を吐く

 

「ほんとしつこいよね」

 

「…平気」

 

「嘘下手」

 

「…でも凪がちゃんと隣にいてくれるから」

 

「そこはほんとに羨ましいけどさ」

沙耶がわざとらしくニヤニヤしてくる

 

そんなやり取りをしてた昼休み

教室のドアが開いた

 

「凛 ちょっといい?」

 

凛が顔を上げると
見慣れない男子が立っていた

隣のクラスの男だった

 

背は高く いわゆるイケメン系
サッカー部の中心メンバーで結構モテると噂の相手

 

(なんで私に…?)

 

沙耶がすぐに小声で囁く

 

「…あれ…堂本先輩じゃん…なんで?」

 

「わからない…」

 

渋々立ち上がり教室の外に出る

 

堂本は軽く微笑んだ

 

「急にごめんね」

 

「いえ…」

 

「実はさ 前から凛ちゃん気になってて」

 

「…え?」

 

「付き合ってるって噂も聞いたけど 直接ちゃんと話したことなかったから」

 

「…その…私…」

 

「もちろん無理にとは言わない」

「でも もしあの凪と何か問題あるなら 俺は普通に誘いたいなって思ってる」

 

(なにこれ…)

(めんどくさ…)

 

でも断ろうと口を開きかけた瞬間

背後から低い声が入った

 

「何してんの?」

 

凪だった

いつの間にかすぐ後ろに立っていた

 

堂本は少し驚きながらも笑顔を作る

 

「お、凪。別に何も」

 

「…ふーん」

 

「ただ凛ちゃんに挨拶しただけだよ」

 

凪は無言で堂本を見つめたままだった

一切笑っていない

目だけが静かに鋭い

 

「凛 行くぞ」

 

「あ、うん…」

 

堂本の隣をすっと抜けて歩き出す

そのまま凪が自然に凛の肩を引き寄せた

 

「…大丈夫?」

 

「…うん」

 

「変な奴 増えてきたな」

 

「…私なんか狙ってどうすんだろ」

 

「俺が独り占めしてんのが面白くねえだけだろ」

 

「ほんともう…学校来るだけで疲れる…」

 

凪はそんな凛の頭をポンと撫でる

 

「平気だろ?お前は俺だけ見てりゃいいんだから」

 

「……」

 

「心配すんな 俺が全部黙らせるから」

 

「……ほんと ずるい」

 

「俺がどんだけずるいか 今頃気付いたの?」

 

「…前から気付いてたよ」

 

思わず笑ってしまった

それでも心臓はバクバク鳴り続けていた

 

ーーー

 
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