幼なじみに溺れました
揺さぶりの波
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翌日
朝の教室はいつもより騒がしかった
「ねえ 凛ちゃん、今日放課後ヒマ?」
唐突に堂本が教室の入口から声をかけてきた
わざとクラス全体に聞こえるような大きさで
「…え?」
周りの女子たちも一斉にザワザワし始めた
「昨日の話の続き ちょっとだけさ」
「凪が嫌なら気にしなくていいけど?」
(は?)
(なにこれ…)
「…私、用事あるから」
「そっか 残念」
堂本はわざとらしく肩をすくめた
そのやりとりを
教室の後ろでじっと見てた凪は無言のまま席を立った
ザッと歩いて堂本の正面まで出る
空気が一気に凍りついた
「お前 ほんとしつけえな」
「ん?別に俺 悪いことしてないよ?」
堂本はヘラっと笑ってるが
その目は探るように光ってる
「凛は俺の女だっつったろ?」
「それは聞いたよ」
「なら引けよ」
「…ああ でも俺、凛ちゃんの方の気持ちはまだ全部聞いてないからさ」
「可能性感じたらアプローチするのは自由だろ?」
空気がピキピキ鳴ってるようだった
周りの女子も男子も全員固まってる
凪は一切笑わず
ただ堂本をじっと見下ろして言い放った
「お前さ」
「俺が余裕見せてんの 勘違いすんなよ?」
「……」
「お前が踏み込める余地は もう1ミリもねえから」
凪の声は低く静かだった
でも教室全体にズドンと響いた
堂本は初めて小さく眉を動かしたが
すぐにニヤついた表情を作り直した
「…ま、そういう強気嫌いじゃないけどね」
「また機会があったらよろしく」
堂本はあっさり引き下がって去っていった
でも
その背中はまだ完全には諦めてなかった
ーーー
昼休み
教室に静けさが戻る中で
凪が当たり前のように凛の隣に座ってきた
「ビビってんの?」
「……ビビってない」
「嘘下手」
「だって…堂本先輩、しつこいんだもん」
「大丈夫だって」
凪は凛の頭をポンポンと優しく撫でた
「全部 俺が潰すから」
「……ほんとに怖いんだけど」
「お前が俺から離れねえ限り 全部守るから」
「離れないよ…」
「んだろ?」
「でも…私も 取られたくないから」
凛が小さく言うと
凪の口元が少しだけ緩んだ
「そういうの もっと言え」
「…言わない!」
「絶対 可愛いのに」
「うるさい!」
でも心臓は
今までで一番高鳴ってた
ーーー