幼なじみに溺れました

意地悪で甘い夜


ーーー

 

家に凪を呼んだあの日の夜

両親が用事で出かけていて
少しの間だけ家には凛と凪のふたりきり

 

「なあ」

凪がソファに座ったまま凛を見上げた

 

「ん?」

 

「なんか落ち着かねえな」

 

「…何が?」

 

「お前がずっとソワソワしてんの」

 

「してないし」

 

「嘘下手」

 

凪は手招きするように指を動かした

 

「こっち来い」

 

「え…やだ」

 

「来い」

 

「…なんで」

 

「理由言わなきゃ来ねえの?」

 

「…当たり前じゃん」

 

「理由?…甘やかすから」

 

「…っ」

 

凛はしばらく固まってたけど
ゆっくりソファの隣に座った

でも緊張で距離が微妙に空いてる

 

「遠い」

 

凪が当たり前のように凛の腰を引き寄せる

 

「ひっ…ちょ、近い…!」

 

「付き合ってどんだけ経ったと思ってんだよ」

 

「…だからって…」

 

「お前マジで可愛すぎるんだけど」

 

耳元で囁かれるたびに
心臓が跳ねて喉が詰まる

 

「…ほんとにずるい」

 

「ずるい男と付き合ったんだろ?」

 

「……」

 

凪はそのまま指先で凛の顎をそっと持ち上げた

そして唇をゆっくり重ねてくる

 

深くて甘いキス

軽くじゃなく 逃げられないくらいしっかりと塞がれていく

 

「…ん…っ…」

 

離れた瞬間
視線を合わせるのが恥ずかしくて顔を逸らした

でも凪はすぐにその頬を指先で撫でる

 

「なあ」

 

「…なに」

 

「俺のことだけ考えてる?」

 

「…考えてるよ…」

 

「ほんと?」

 

「ほんとだよ…」

 

「いい子」

 

優しい声で囁かれて
胸がぎゅうっと締め付けられた

 

(ほんとに…この人には勝てない…)

(でも それがすごく幸せで苦しい)

 

そのまま凪は凛の髪を撫でながら
ゆるく笑っていた

 

ーーー

 
< 40 / 63 >

この作品をシェア

pagetop