幼なじみに溺れました
第7章
体育祭 開幕
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だんだん高校生活に慣れてきた頃
学校では体育祭が近づき 空気が高まっていた
放課後のグラウンドは練習中のクラスがあちこちで声を上げている
「凛ー!次リレーのバトン練習入るよ!」
沙耶に呼ばれて小さく手を振る
「はーい…」
凛はリレーの代表メンバーに選ばれていた
走るのは得意じゃないけど
クラスの流れで断れなかった
(なんでこんな目立つ種目に…)
(絶対 凪の仕業だよね…)
こっそり凪の方を振り返ると
遠くで他の男子たちと談笑しながらこっちをじっと見ていた
(また…見てるし)
心臓がザワザワする
「凛 ちゃんと前向け」
沙耶がクスっと笑う
「だって…」
「ほら、絶対見られてるって思ってるからそわそわしてるんでしょ?」
「ち、違うし!」
「はいはい」
沙耶がバトンを渡して走り出す
そのあとを追うように凛もスタート位置に入る
ダッシュするたび
心臓の高鳴りと一緒に どこかで凪の視線も感じてた
ーーー
本番当日
朝から校内は騒がしかった
保護者たちも続々と到着している
「お母さんたちもう来てる?」
沙耶が聞いてきた
「うん…さっきからこっそり見てる」
「ドキドキだねぇ」
(…ほんとにドキドキだよ)
ちらっと客席を見上げると
自分の母が他の保護者と並んで手を振ってきた
そしてその横にはーー
「あ…」
凪がスッと母親たちの前を通り過ぎた瞬間
母がピクリと反応した
(…バレた?)
母は小声で隣のママ友に何か耳打ちしてる
「ねえ あの子が例の子?」
「ん?うちの凛が最近仲良くしてる男の子って…あの子?」
(…最悪だ…)
ーーー
午前の競技が終わり 昼休み
控え室のテントで休憩してると
後ろから凪がスッと入ってきた
「お疲れ」
「…ねえ」
「ん?」
「今…母にバレた気がする」
「バレた?」
「凪のこと…誰かだって勘付いてる…!」
凪はポケットに手を突っ込んだまま軽く笑う
「まあ そろそろバレるだろ」
「全然動揺しないじゃん…」
「お前の親に嫌われるようなこと してねえし?」
「…まあ そうだけど…」
「じゃ 次のリレー頑張れよ」
「え…」
「負けたら夜のご褒美無しな」
「な…何言ってんの!」
凪はクスっと笑ったまま軽く頭を撫でる
その手が優しくて 意地悪で
また心臓がうるさく跳ねた
(ほんとずるい…)
ーーー