幼なじみに溺れました
運命のリレー
ーーー
午後
ついにリレー本番の時間が近づいてきた
グラウンドの歓声がどんどん高まっていく
スタート前の控え場所に並ぶ凛は
自分の心臓の音が周りに聞こえてるんじゃないかってくらい
バクバク鳴っていた
(頼むから転ばないで…)
(みんなの前で恥ずかしいのは嫌…)
遠くの保護者席をふと見ると
母が双眼鏡でこちらを覗いてるのが見えた
隣のママ友が何かを耳打ちしてくる
「あの男の子が彼氏くんなの?」
「…たぶん、あの子」
(やっぱりバレてる…!)
凪はコースの反対側に立ってたが
目が合った瞬間
軽く顎をしゃくって笑ってみせた
「大丈夫だから」って
無言でそう言われてるようだった
(ほんと…ずるい)
スタートの合図が鳴る
順調にバトンが繋がっていく
自分の番が近づいてくるたび
手足が震えていくのがわかった
「凛、次!」
バトンを受け取った瞬間
一気に走り出す
「凛ー!いけー!」
沙耶の叫び声も遠くで聞こえていた
必死で前を見て走る
でもーー
ほんの一瞬 足元のラインを踏み外し
体勢が少し崩れた
「あ…!」
左足が軽くもつれてバランスを失いかけた
でも
その瞬間
次のバトンゾーンに立ってた凪が
迷わず一歩飛び出して手を伸ばしてきた
「おい こっち!」
ぐっと腕を掴まれる
そのまま凪が自然に引き寄せる形でバトンを受け取って走り出す
(助けられた…!)
周りの歓声が一段と高まった
凪はそのまま最後まで走り抜けてゴールを決めた
大歓声の中
リレーはクラスの勝利に終わった
ーーー
ゴール後の控えエリア
凛はまだ胸がバクバクして息が整わなかった
そこに凪が戻ってくる
「怪我してねーか?」
「…うん…平気」
「マジで焦ったわ」
「…ごめん…」
凪は小さく笑って
そのまま軽く頭をポンっと撫でた
「お前ほんと転がされやすいんだな」
「…私が?」
「俺の前だと特に」
「もう…!」
「可愛いから仕方ねえけど」
耳元で意地悪く囁かれて
また顔が一気に熱くなる
ふと視線を感じて振り返ると
保護者席の母がこちらをじっと見ていた
(…絶対今の見られた…)
母と目が合った瞬間
母が薄く笑いながら
ゆっくり頷いたのが見えた
(やばい…これ…完全に認められた…)
でもそのドキドキの中に
ほんの少しだけ安心が混じっていくのを感じていた
ーーー