幼なじみに溺れました

溺れるくらい好き


ーーー


 

デート帰りの帰り道

夜の商店街をふたりで歩く

 

昼間の人混みも消えて
いつもの帰り道と違う静けさが余計にドキドキを煽っていた

 

凛はずっと手を握られたまま
まともに顔を上げられずにいた

 

(手…ずっと繋がれてる…)

(心臓の音うるさい…)

 

凪がふと立ち止まる

 

「なあ」

 

「…ん?」

 

「今日さ」

「お前 ずっと可愛かった」

 

「…っ」

 

「顔 真っ赤」

 

「ずるい…!」

 

「ずるくていいだろ」

 

「…なんでそんな余裕なの」

 

「俺の方が お前の全部欲しがってんのに」

 

「…っ…私だって…!」

「私だって…凪の全部欲しい!」

 

言葉にしてしまった瞬間
胸が苦しくなるくらいドキドキした

でももう止まらなかった

 

「ほんとに…怖いくらい好きで…」

「他の子と話すのも嫌で…」

「私の知らない凪の過去とか考えただけで苦しくなるし…!」

 

堰を切ったように
ずっと抱えてた想いが溢れていく

 

凪はその全部を黙って聞いていた

そしてゆっくりと
凛の肩を抱き寄せて耳元で囁いた

 

「いいよ それで」

 

「……」

 

「全部俺に執着しろ」

 

「俺はお前だけだし」

 

「どんだけ怖いくらい好きでも ちゃんと受け止める」

 

「…ほんとに…?」

 

「ほんとに」

 

凪はゆっくりと顔を寄せた

キスが落ちる直前の距離で

 

「俺の全部は ずっとお前のもんだから」

 

そのまま優しく
深く
ゆっくりとキスが重なった

 

街の灯りの中
誰もいない帰り道で

凛は静かに目を閉じたまま
凪の腕の中に身を預けていた

 

(ほんとに…もう離れられない)

(この人に溺れてる)

 

ーーー

 
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