幼なじみに溺れました

近すぎる距離


ーーー



 

その日も朝から女子たちの声が響いてた

 

「なぎくん 今日放課後暇?」

「プリ行こーよ」

「ちょっとだけでいいからさ」

 

凪は相変わらず気怠そうに
ポケットに手を突っ込んだまま答えてた

 

「うーん 気分次第かな」

 

「なにそれ冷たい〜」

「でもそこが好き」

 

もう完全に取り巻きが日常化してる

凛は今日もその光景をスルーして自分の席に座った

 

するとすぐに隣から声が飛んでくる

 

「今日機嫌悪い?」

 

「別に」

 

「ずっと無視されたら拗ねるとこだったわ」

 

「そんなことで拗ねないで」

 

凪はふっと笑った

 

「じゃあもっと構ってくれたらいいのに」

 

「なんで私が?」

 

「隣だから 特権だろ」

 

わざとらしく机に肘をついてこちらを覗き込んでくる

その顔が近い

目を逸らすのも負けな気がして睨み返したけど
内心ドキッとしてるのが自分でも腹立たしい

 

沙耶と結愛は後ろでクスクス笑ってる

 

「凛 もう完全にペース持ってかれてない?」

「てか凪くん あんたのことだけやたら絡んでない?」

「ほんとそれ なんで私って感じ…」

 

凛は苦笑いしながら返したけど

心の奥で少しずつモヤモヤが膨らんでいくのを感じてた

 

昼休みも凪は当たり前のように自分の席にやってくる

 

「弁当見せろ」

 

「は?」

 

「何入ってんの 見せろって」

 

仕方なくお弁当箱の蓋を開けると
凪は勝手に唐揚げを一つつまんだ

 

「うま」

 

「ちょっと!」

 

「んだよ 1個くらいいいじゃん」

 

悪びれもせずまたニヤッと笑う

本当にムカつく

けど不思議と心臓がまた跳ねる

 

そこへ後ろの女子たちの視線が刺さるように集まってるのがわかった

 

「…ほんと目立つんだけど」

 

「別に何もしてねーじゃん」

 

「いや してるよ」

 

言い返すと凪は面白そうに肩をすくめた

 

「そういうとこ 面白い」

 

本当に
何なんだこの人は

 

避けたいのに避けられない
ムカつくのにちょっと気になる

そんな厄介な毎日が始まっていた

 

ーーー

 
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