幼なじみに溺れました

お泊まり



ーーー

 

リビング

 

凪は当たり前のようにソファへ座ってリラックスしていた

凛はというと
キッチンとソファの間をソワソワと行ったり来たりしていた

 

(なんか…すごい…不思議な空気…)

(いつも通りのはずなのに…)

(家にふたりきりって…こんなに緊張する…!?)

 

「なあ」

 

「…なに」

 

「落ち着け」

 

「落ち着いてるし!」

 

「嘘下手」

 

凪はふっと笑ったまま
ポンポンとソファの隣を叩いた

 

「ここ座れ」

 

「……」

 

ゆっくりと凛は凪の隣に腰を下ろした

自然と肩が触れるくらいの距離

 

心臓がうるさい

 

凪が静かに凛の手を取った

 

「手冷えてんじゃん」

 

「だ、だって…緊張するし…」

 

「なんで緊張すんの」

 

「…だって…!」

 

「俺 何もしねえって言っただろ」

 

「…でも…!」

 

「お前が逃げなきゃ、な?」

 

「……」

 

凪は手を握ったまま
指先を絡めてくる

 

「な?」

 

「…ん…」

 

「可愛い」

 

「う、うるさい…」

 

凪はそのまま
ゆっくりと顔を寄せて耳元で低く囁いた

 

「ほんとにさ」

「お前は 俺の前だとすぐ震えるな」

 

「震えてない…!」

 

「嘘下手」

 

そのまま唇が耳たぶをかすめるように当たった瞬間
ビクッと体が跳ねる

 

「……!」

 

凪は楽しそうに微笑んだまま
首筋へそっと唇を滑らせる

 

「ひ…っ…!」

 

「焦らすの 楽しすぎる」

 

「…ほんとに…いじわる…」

 

「だって 俺の彼女だし」

 

そう囁かれながら
凛の体は完全に火照っていた

 

(ほんとに…この人には勝てない…)

 

凪は甘噛みをやめると
そっと額をくっつけて囁く

 

「お前が嫌がらない限り ずっと甘やかすよ」

 

「……」

 

「溺れていいんだから」

 

凛は小さく頷いた

そのまま静かな夜がふたりを優しく包み込んでいった

 

ーーー

 
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