幼なじみに溺れました
第11章
花火デートの約束
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日差しが強く雲ひとつない青空
蝉の鳴き声が途切れなく響いていた
風が湿った空気を運ぶたび
制服の袖が微かに揺れた
「あっつい…」
凛はうちわをパタパタしながら呟いた
「ほら 氷買っといて正解だろ?」
凪が差し出してくれたペットボトルを受け取る
冷たい感触が指先からじんわり伝わる
「…助かる…」
「お前 すぐ溶けそうな顔してるもんな」
「うるさい…!」
学校の帰り道、並んで歩くふたりの前に
祭りの準備を進める屋台が並び始めていた
赤い提灯が風に揺れ
浴衣姿の人たちが少しずつ増え始めている
「そういや 週末の花火大会」
「お前 行く準備してんの?」
「えっ…う、うん…沙耶と行こうかなって…」
凪は一瞬だけ目を細めた
「…ふーん」
「な、なに?」
「俺は誘われねえの?」
「だ、だって…人混みすごいし…」
「凪 人混み嫌いだって…」
「お前となら別に平気」
「……」
「な?」
凪が自然に手を差し出してきた
「……じゃあ…一緒に…行こ?」
「可愛い」
「うるさい…!」
凪の手を取った指先が
ほんの少し震えていた
(…夏ってだけで、こんなにドキドキするのはずるい…)
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