幼なじみに溺れました
第12章
小さな家族の仲間入り
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続き 小さな命にふたりの想いを乗せて
花火大会の翌日
リビングの隅
窓際の棚に新しく置かれた小さな水槽
中では昨日すくった小さな金魚が
ゆったりと尾びれを揺らして泳いでいた
凛はしゃがみ込んで
じっと水槽を見つめていた
「…元気そうだね」
「うん ちゃんと泳いでる」
隣には凪が座っていて
小さな餌を指で摘まみながら静かに笑った
「これから毎日世話してやれよ」
「もちろん…!」
その時、後ろから母の声がした
「あら…可愛い水槽」
「どうしたの?その金魚」
「え、あ、あの…」
母はニヤニヤしながら
凪の方をちらっと見る
「もしかして…祭りの?」
「凪が取ってくれて…」
「へぇ〜〜」
母の口元の緩みは隠せていなかった
「ふふ…なんかもう完全に新婚さんみたいね」
「や、やめてよお母さん…!」
「だって〜」
凪は横で苦笑しながら
「まあ、大事に育てますんで」とだけ答えた
(ほんとに…もう…)
(でも…こういうの、悪くない)
小さな命が静かに泳ぐ水槽の中で
ふたりの距離もまた 少しだけ近づいた気がしていた
ーーー
── それから 数ヶ月
木枯らしが吹き始める季節
吐く息が白くなるほどの冷え込みが
街のイルミネーションをより鮮やかに見せていた
ふたりの間には
すっかり当たり前のように手を繋ぐ習慣が染みついていた
そして、今年は――
クリスマス
ふたりにとって
初めての冬のイベントがすぐそこまで迫っていた
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