幼なじみに溺れました
第14章

春の訪れ


ーーー


 

春先の風はまだ少し冷たさを残していた

 

満開の桜並木を抜ける通学路
制服の袖越しに風が花びらを運んでいく

 

「桜…綺麗だね」

 

「桜も悪くねえけど」

「俺はお前が隣にいんのが一番だけどな」

 

「もう…相変わらずずるいんだから」

 

ふたりの距離感は
春になっても当然のようにくっついたままだった

 

そして今日は――クラス替え発表の日

 

掲示板の前にはたくさんの生徒たちが集まっていた

 

「うわ、人多い…」

 

「大丈夫だって」

 

凪は凛の背中を自然に支えながら
人混みを少しずつ進んでいく

 

そして
新しいクラスの名簿に目をやった瞬間

 

「……あ」

 

凛の名前のすぐ下に――

 

「……同じだな」

 

凪が小さく呟いた

 

「…え…同じ…だ…」

 

じわじわと実感が湧いてくる

 

「え、えええ 同じ!?ほんとに!?!?」

 

「お前 驚きすぎ」

 

「だって!いや…嬉しいけど…」

 

凪はニヤッと笑いながら
ふわっと凛の頭を撫でる

 

「これからまた一年間 俺の隣キープ決定な」

 

「も、もちろん…!」

 

「逃げんなよ?」

 

「逃げない…!」

 

凪は小さく耳元で囁く

 

「俺のもんだからな ずっと」

 

その低い声に
また心臓が跳ね上がった

 

(ほんとに…また一年…)

(隣で過ごせるんだ…)

(幸せすぎて ちょっと怖いくらい)

 

春の風が優しく吹き抜ける中
ふたりの距離はまたひとつ重なっていった

 

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