幼なじみに溺れました
第15章
終わらない"独占"
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冬の街にイルミネーションが灯る頃
ふたりで歩く道は
すっかり当たり前の景色になっていた
凛は凪の手をぎゅっと握り直す
その指先の温もりが
胸の奥まで染み込んでくる
「ねえ…もう2回目の冬だね」
「そうだな」
「…早かったね」
「お前はそう言うけど、俺は最初からこうなる予定だったけどな」
「ほんとに…ずるい」
凪はゆるく笑いながら、凛のマフラーを指で引き寄せた
「逃げんなよ」
「逃げない…」
いつの間にか、そう言い合うのも癖になっていた
ーーー
──思い返せば、1年色んなことがあった
文化祭では準備の手伝いで凪に他の女子が絡んで
少しだけモヤモヤしたけど
「お前しか見ねえって言ったろ?」
の一言に全部溶かされて
夏は花火大会
浴衣を着て手を繋ぎ
屋台で金魚を取ってくれた
今でもあの金魚は
家の水槽の中で元気に泳いでいる
秋は勉強を見てもらいながら
ソファの上で甘やかされて焦らされて
冬はクリスマス
プレゼントでもらったペンダントが
今も凛の胸元で静かに揺れていた
気付けば、ふたりの積み重ねた日々は
静かにでも確かに ずっと続いている
(たぶん この先も…)
ーーー
その夜、公園のベンチに並んで座ったふたり
冬の夜風が頬に当たるたびに
凪は自然と凛の肩を抱き寄せる
「なあ」
「ん…?」
「これからも ずっと俺の隣な」
「…もちろん」
「ずっと独占してていい?」
「当たり前だろ」
凪はゆるく微笑んだまま
ポケットから小さな箱を取り出した
凛は驚いて息をのむ
「え…?」
箱の中には
華奢なリングがひとつ
「まだガキだし 結婚って歳でもねえけど」
「でも 先に証拠だけ渡しとく」
凛の胸がじんわり熱くなる
視界が滲みそうなのを堪えながら
凪の目をまっすぐ見つめた
「…凪…」
「右手出せ」
凪はそっと凛の左手を取り
その薬指にゆっくりとリングをはめた
「これでもう完全に逃げらんねえな」
「…うん」
「…逃げないよ」
「これからも、全部俺のだから」
「うん…ずっと…ずっと凪のものだよ…」
凪はそのまま
優しく唇を重ねた
雪が静かに舞い落ち始める中
ふたりは これまでの積み重ねごと抱きしめ合った
(これからも 何があっても――)
(ずっと、ふたりで)
ーーー
《 完 》
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