幼なじみに溺れました
少しずつ近づく距離
ーーー
6月になってクラスでは文化祭の準備が始まった
今年の出し物はカフェになった
班分けや役割分担を決める話し合いが行われていた
「凛は何やる?」
沙耶が隣で尋ねてくる
「んー裏方がいいかな」
「えー接客向いてそうなのに」
「絶対無理 そういうの苦手だから」
「俺 客引きやるわ」
突然凪の声が後ろから飛んできた
「お前は?」
「私?私は裏方…」
「つまんねえな 接客出ろよ」
「いや だから無理だって」
凪は腕を組んでニヤっと笑った
「お前さ 顔悪くねえんだからさ 使わねえと勿体ねえだろ?」
「は?何それ」
「素直になれって」
その会話に周りの女子が一斉にこちらをチラチラ見始めた
微妙な空気が流れる
「…ほんとに意味わかんないんだけど」
凛はぷいっと顔を逸らした
沙耶が後ろで小声で囁く
「ねえ 凛 完全に狙われてない?」
「狙ってないからあんな軽いんでしょ」
「いやいや ちょっと異常だよ 毎日絡まれてんじゃん」
「ほんと意味わかんない…」
文化祭準備が進む中でも
凪は何かにつけて凛に話しかけてきた
「お前さ リボン曲がってんぞ?」
「え?あ、ほんとだ」
凪が手を伸ばしてリボンを直そうとした瞬間
「自分でやる!」
慌てて後ずさる凛
「そんなに警戒すんなって」
「だって距離近すぎるでしょ!」
「別に減るもんじゃねえだろ?」
「減るとか減らないとかの問題じゃなくて…!」
「お前さ」
不意に凪の声のトーンが少しだけ低くなる
「こういう時に素直にされるがままになる女も多いんだけどな?」
「……」
何も言えなくなって固まった凛を見て
凪はまたニヤッと笑った
「ま そこが面白いけど」
余裕のある顔
そのくせじわじわ距離を詰めてくるこの感じ
本当に嫌い
なのに
なんでか毎回顔が熱くなる自分がもっと嫌だった
周りの女子たちの視線もまた刺さるように感じていた
「あの子さ ほんといいよね なぎくんと仲良くなれて」
「ずるい」
「いつの間にあんなに距離詰めたんだろ」
教室の中に流れるそういう微妙な空気を
凛は感じないふりをするしかなかった
ーーー