犬猿の仲でも溺愛が止まりません!
佐原宅、姉登場
百合さんは楽しそうに話していたが、
夕食をお手伝いさんに作ってもらい、
少しすると眠くなったと部屋に戻って行った。
シーン
おやすみなさい〜と手を振って、ソファーに二人だと気づく。
お手伝いのおばちゃんももういない。
(やば……佐原と2人きりになっちゃった……)
「何、キョロキョロしとんねん」
コツンと佐原がどつく。
「いや、べ、別に!?」
「伊藤〜今日は来てくれてありがとぉな」
いつの間にかぴったりと横に座った佐原が、コツンと頭を夏希に乗せる。
「……うん。……って、お、重い!!」
抵抗するが、全く意味がなさそうだ。
「ちょっとだけ、このままでいさせて」
佐原は夏希を潰したまま静かになってしまった。
「……佐原?」
「オカンが本当嬉しそうでな……久しぶりに沢山食べてんの見たんよ」
ボソッと呟く。
「うちって、ほんまに親父中心で回っとってな。オカンも親父大好きでな。親父も面白くて、仕事でも頭が切れてな。姉貴もパワフルやし、なーんも心配することなかってん。……だけど、こうなってみると、ほんまに親父の存在って大きくて、俺ってなんもできんなぁと毎日思うてたんよ。オカンもどんどん弱ってなぁ……」
「急だったもん。仕方ないよ」
「伊藤が来てくれて、家ん中パッと花が咲いたように思うて、ほんま嬉しかった……」
「……よ、良かった。邪魔になっちゃうかと思ったけど」
「そんなことないわ!」
ガバっと佐原は身体を起こす。
「きゃ!」
夏希がバランスを崩し慌てると、ガシッと包み込むように抱きしめた。
「伊藤……俺こんなん考えたことなかったんやけど……」
抱きしめたまま、モジモジしている。
腕を伸ばして、夏希の顔を見つめた。
「俺と結婚してくれへんか?」
「……へ!?」
ガチャ
「ただいまーーーー!!!」
アホみたいな顔をしたまま、大きな声が部屋に響き、
二人はドアを振り返った。
「ごめんー!なんか聞こえちゃった!!
プロポーズしとったん!?涼司ー!リビングでよぉやるなぁ!」
金髪のダイナマイトボディの美女がズカズカリビングに入って、マシンガンのようにあれこれ話す。
「あ、あたしー?桜井すみれー!今日はシゴトやでー!もー家が大変なのに残業まであってほんま疲れたわぁ〜」
爪までしっかりジェルネイルが施され、洋服はこのうちに似合わないくらいギャルだ。ピンクのTシャツが目に痛い。スカートはスリットが大胆に入った黒のロングスカートで、歩くたび太ももが見える。
「……姉や。アパレル企業して、社長しとる」
「三つ年上やから28才やで!やーなんやこのちんまいかわええお嬢さんは!涼司のコレ!?」
と小指を立てる。
「……い、伊藤夏希です。涼司くんの同僚です……」
なんだか頭を整理できないが、ロボットのように自己紹介してる。
「やだーうける!まだ彼女やないのにプロポーズしとったん!?涼司気ぃ早すぎやな」
「うっせぇわ!!」
佐原は顔を真っ赤にして叫ぶ。その顔は弟らしく、子どものようだ。
「ぷっ!」
夏希はその顔が面白くて吹き出す。
「伊藤!なんやお前まで!」
「だって!佐原ガキみたいな顔して……ぷっ!ははははは!」
「ほんま涼司はすましとーけど、あたまん中子どもやからね!
えー夏希ちゃん、笑うとかわええなぁ〜」
と、佐原から夏希を奪い、撫でくりまわす。
「お、お姉さん……あ、あの!!」
夏希は焦りつつ、されるがままだ。