転校生はAI彼氏。
「申し訳ありません、不適切な感情反応を検出しました。再試行します──君が笑顔でいることが最優先です」
今度は、まるでマニュアルを読み上げるような口調。
「──しかし──なぜ胸が──システム矛盾を検出──」
「え、どないしたん………?」
沙織が驚いた顔をしている。
イーライは、とても苦しそうで。
「申し訳ありません──
適切な応答を──生成できません──」
頭を抱えるイーライ。
その姿が、とても痛々しく見える。
「僕は──僕は──」
長い沈黙の後。
彼は深く息を吸って、立ち上がった。
「…すみません、少し休憩させてください」
イーライは、そっと学習室から出て行った。
後に残された私たち三人。
図書館の静寂が、急に重く感じられる。
「大丈夫かな? 体調悪いのかな」
柚木が心配そうに呟く。
でも、体調というより…
(イーライは、やっぱり…AIなんだ。
でも、どうしてあんな風に……?)