アルト、花火を体験する【アルトレコード】
「花火の映像を見てたでしょ?」
「でも結局は映像じゃん」
 アルトを見ると、彼は口を尖らせていた。

「お願い。ちゃんと端末の中で大人しくするから」
「うーん……」
 私は北斗さんをちらりと見た。
 視線に気が付き、彼は苦笑する。会話が聞こえていたため、すぐに答えてくれた。

「本当に大人しくできるなら、行ってもいいよ」
「だったら北斗も一緒に行こ!」
 アルトは淡い金の目をきらきらさせた。

「俺はいいよ。先生と行っておいで」
「やだ、北斗も一緒がいい!」
「アルト、わがまま言わないで」
 留めた直後、ふと子ども時代を思い出す。

 家族で行った花火は、なんだか特別だった。アルトには両親がいない。おこがましいけれど、私が母がわり、北斗さんを父がわりに思い出を作ってあげたくなってしまう。

「……北斗さん、あの……」
「君まで一緒に行こうって言い出すんじゃないだろうね?」

「……その通りです」
 見透かされたのが恥ずかしいけれど、私は北斗さんをしっかり見て言う。

「思い出って大切じゃないですか。素敵な思い出は時として人生の支えにもなります。アルトにとって北斗さんは欠かせない人です。だから北斗さんとの思い出も作ってあげたいです」

「思い出が支え……」
 北斗さんがオウム返しに言い、真剣に考え込む。

 思いがけない黙考に、私は少し動揺した。そんな悩ませるようなことを言ってしまっただろうか。
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