アルト、花火を体験する【アルトレコード】
「あの、無理にとは言わないんで……」
「いや、大事なことだよ。俺も行こうかな」
 北斗さんの答えに私は驚いた。

「いいの!?」
 アルトが聞き返す。
「ああ。俺にも大切な思い出があるからね。アルトの思い出を一緒に作れたら嬉しいよ」
「やったあ! 一緒に花火だ!」
 アルトは両手を挙げて何度もジャンプして、踊り出さんばかりだ。

 北斗さんが微笑を浮かべてアルトを見守るから、私はなんだか胸が温かくなった。



 それからは忙しくなった。
 アルトのために、仕事の合間に浴衣のデータを作り、りんご飴やクレープ、かき氷、わたあめなど食べ物のデータも作った。

 アルトが屋台を見て食べたいと言ったとき、希望の物を渡せるようにするためだ。
 完全に業務外なので、プライベートの時間を削ることになる。だけどアルトが喜ぶ顔を思うと、大変ではあってもまったく苦ではない。

 自宅のパソコンはスペックが低いので、北斗さんの許可をもらって研究室のパソコンでそれらを作った。

 その日も研究室に残って作業をしていると、先生、とアルトに話しかけられた。
「なに?」
 私はキーボードを打ちながら答える。

「ぼくに浴衣を着せてくれるんでしょ? 先生も浴衣を着てね!」
「え!?」
 私は驚いた。
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