本屋のポチ
食事は私の家に帰ってとることにした。途中で何か買って帰って。
彼に荷物を持ってもらい、ドリンク代を払ってカフェを出る。彼は傘を持っていないから、自然と相合傘になる。雨は少しまた強まり、気温はだいぶ下がっていた。
「寒くない?」

「ずいぶん気を使えるようになったね」
「茶化さないで」
「大丈夫だよ。きみこそ寒そう」
「カーディガン持ってる」
「体温が低い子ってなんか良いよね」
私が意味ありげにそう言って彼の左手にそっと指をすべらせると、彼がはにかむように頬を染めて笑った。

ヒーリングミュージックのような雨音を白い傘で受ける。小さな水たまりを避ける。まぶしすぎるネオンに目を伏せる。
「どっかで聞いたような台詞だなぁ」
やっと緊張がほぐれたような顔で彼が笑った。可愛い。大型犬みたい。可愛すぎて撫でくりまわしたい。可愛すぎる!!
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