本屋のポチ
（何て可愛いんだ。新人の子たちって）
あぁ言う子がとんとん拍子に出世したりするからな。私は思わずニヤニヤしてしまう。私とまったく同じことを考えていたらしく、店長もニコニコしていた。
彼は影で「ポチ」と呼ばれている。まだ慣れない大型犬みたいで可愛いから。

「ポチ」はカウンター内のパソコンを手馴れた様子で操作した。手が綺麗だな。白い指が長い。節も少なくて細い。
（書店員やってたら、すぐにごつごつになるよ。楽しみだな）
それから、先輩女性社員に何事かを聞く。その社員の背が低いので、上体を深く折り曲げるようにして。
そうそう。そうだよポチ。聞くのは恥ずかしい事ではないぞ。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と言うじゃないか。
そしてポチはその黒髪を軽く揺らして私に深く一礼すると、雑誌を探す旅に出た。本棚の海へ。
ここ掘れワンワン。

彼の先輩たちもニコニコしている。先輩から見ても、彼は育て甲斐のある新人さんらしい。私もつられてニコニコしてしまう。
がんばれ、ポチ!!

また、数分後。
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