本屋のポチ
ポチは、沢山のムック本を抱えて帰って来た。
(おい、私に何冊買わせる気だ)
私は吹き出したいのを我慢して、ポチがレジに並べるムック本をじっと見る。
「えぇと良くわからなくて、」
正社員がんばれ!! この業界で生きていきたかったらもうちょっとがんばれ!! そして声が良い!!
「この中にお探しの雑誌はありますか?」

本気で吹き出すところだった。

ポチは真剣だ。真剣に、この中から好きなものを選べと言っている。
これが「新人」の必死さか。
「?」
笑いをこらえて身体を震わせる私を見て、ポチが不思議そうな顔をする。
(本当に可愛いな。ポチ)
「残念ながら、私が探しているのはムックではなく雑誌なんですよ。
雑誌」
「……」
あ、犬耳たれた(幻覚)。
頑張ってこれだけ探し出して来たと言うのに、私の求める雑誌をポチは掘り出して来られなかったのだ。

「少々お待ちください」
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