本屋のポチ
ポチはまた同じ女性先輩社員に助けを求めた。
これで、ポチが後でしかられることはないだろうか。それがポチの成長のためとは言え、やんわり注意に留めてもらおう。
むずかしい案件に立ち向かうことは人間を成長させる。がんばってね、ポチ。
私は笑いをかみ殺すために口元に手をやり、再び雑誌探しの旅に出たポチの勇姿を見送った。
そして -

「お待たせしました」
ポチが雑誌を探しはじめて約10分。
とうとうポチは、ご主人様(私だ)の望む雑誌を手に入れて来た。
よしよし、良くやった、ポチ。頭を撫でくり回しておやつをあげたい気分だぞ、ポチ。
「お待たせして申し訳ありませんでした」
「いえいえ」
きみが奮闘している姿を見ているのはものすごく楽しかったよ。本当に期待の新人だね、きみは。

「この書店のカードお持ちですか」
「はい」
何だか、レジの扱いも初々しい。そして、本当に良い声だな。
もっとはっきり話したら、もっと魅力的だろうに。
でも、この外見では、自分の未知の領域には気づいていないだろう。
「カードお返しします。7890円になります」
そこは「ポイントはお使いになりますか」だろう。定型文だよ。ポチ。

「あ、ポイントはお使いになりますか」
(ダメだ。もう吹き出したい。本気で)
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