君がくれた明日
2人の未来を探しに



 

 

初めて二人で物件を見に行った日

 

 

「うわぁ…!ここ、すごくいいじゃん!」

 

叶愛が嬉しそうに部屋中を歩き回ってた

 

「駅も近いし、キッチンも広いし…」

 

「窓からの景色も悪くねぇな」

 

「ねぇ、ちはやくん! ここにしよ?」

 

「もう決めんのかよ」

 

「だって、ちはやくんとならどこでもいいけど…ここ、すごく住みやすそうだもん」

 

「……なら、ここにすっか」

 

「やったー!」

 

満面の笑顔で跳ねる叶愛

 

俺はその姿を、ずっと目で追いかけてた

 

 

ああ…

ほんとに一緒に住むんだな、俺たち

 

その事実が
胸の奥からじわじわと湧き上がってきた

 

 

【*】

 

 

後日、二人で家具を見に行った

 

「ソファは大きめがいい?」

 

「叶愛が寝転ぶだろ」

 

「え、そんなだらけないもん!」

 

「絶対だらけるだろ」

 

「う……まぁ、たまには」

 

「やっぱりな」

 

「ちはやくんの膝の上で寝るほうがいいけど?」

 

「……お前、そういうとこほんとズルい」

 

「ふふっ」

 

 

家具売り場の端で
小さく手を繋ぎながら歩いた

 

なんでもない買い物なのに
それが幸せだった

 

こんな日々が
永遠に続くと思ってた

 

 

【*】

 

 

だけど──

 

 

幸せだけが積み重なるわけじゃない

 

 

引っ越し直前、バイト帰りの夜──

 

「ちはやくん、今日なんで連絡くれなかったの?」

 

叶愛の声が少し怒ってた

 

「……いや、ちょっとバイト伸びただけだって」

 

「でも、いつもなら『今帰る』とか送ってくれるのに…」

 

「ごめん、急いでたし、スマホ出せなかったんだよ」

 

「……ほんとに?」

 

「ほんとにだって」

 

「…そっか」

 

 

叶愛は不安そうに目を伏せた

 

 

ほんの些細なすれ違い

 

でも、俺はそれが妙に胸に刺さった

 

 

「なあ、叶愛」

 

「ん?」

 

「俺、お前のこと裏切ったりしねぇから」

 

「……知ってるよ」

 

叶愛が小さく笑った

 

その目の奥には、ちょっとだけ涙が浮かんでた

 

「でもね、ちはやくんが誰よりも大切だから、不安になっちゃうの」

 

「俺もだよ。お前がいなきゃ無理だ」

 

 

手を繋いだまま
静かに抱き寄せた

 

「ずっと一緒にいような」

 

「うん、ずっと」

 

 

【*】

 

 
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