溺愛の業火
君だけ
伊東 暁乃(いとう あきの)。
俺の好きな女の子。
今日も俺は君を口説く。
「暁乃、好きだ。」
先日には出なかった言葉。
「ありがとうございます。今日も沢山の女の子に同じ事を言うのは大変ですね、お疲れ様です。」
他人行儀な敬語が嬉しいなんて、俺はMっ気があるのかな。
俺の邪魔が嫌なのか、先日のご褒美の話を流すためなのか、今日は黙々と本を読む姿。
「ホントは知っているでしょ?俺が好きだと言うのは、誰だけなのか。」
視線が本に奪われたままの君に、俺は寂しさが募っていく。
「私には自信がありません。他に相応しい子がいますよ。」
小さな声。
本は同じページから動かない。
胸は痛むようで息苦しい。
どう伝えればいいのだろう。
篠崎と同じように、君も周りを気にする。
だけど君は人から頼られる篠崎とは違う。