溺愛の業火
近づけた顔を手のひらで押さえて、冷めた表情で拒否する。
自分が悪いのに。
込み上げてくるのは悲しみ。
後悔などないけれど。
「ごめん。」
謝って沈む俺を、彼女は覗き込んで見つめる。
和らいだような眼。
心配してくれたのかな。
優しくされているようで、心は単純に反応した。
口元が緩んでいく。
誤魔化すように、彼女の肩に額を乗せた。
「少し、このままで居て。」
拒絶も無く、甘えるのが許されているようで満足する。
息遣いと体温を身近に感じ、良い匂いに幸せを味わう。
「好き。」
小さな声で伝えた。
少しの反応。
だけど、彼女の返事はなかった。
ほんの数分。
もしかすると1分もなかったのかもしれない。
「帰る。」
弱く押し退ける手。
俺は離れた。
こんな想い、君だけなのに。
どうすれば伝わるのかな。
惨めだ。