溺愛の業火

傷つけるのは俺


夜、月のない星の瞬く空は物足りない。
自分の感情も欠けているようで、埋まらない心は痛む。


そんな日々を繰り返し、心が壊れたような無感覚で口は滑った。

「ごめんね、君の想いには応えられない。俺が好きなのは、伊東 暁乃(いとう あきの)だけだから。」

告白を受け、自分が振る女の子が味わう心の痛みを目の当たりに。
俺は自分の気持ちから逃げたんだ。

噂は広まり、君が避けたかった事も降り懸かるだろう。

護れないのに。
安易に、自分の気持ちを公にした。

「松沢くん、少し時間を下さい。良いですよね?」

眼は真剣で、俺を責めるように真っ直ぐ向けられている。
視線を合わせるのを躊躇した。

「ごめん、迷惑を掛けた。皆の前で振ってよ。」

足を一歩、後退して方向を変える。


自分に対する苛立ちを、誰かに知って欲しくて清水に電話した。
いつもなら2コールで出て罵倒するか、着信拒否をするのに。

出ない。多分、篠崎と仲良くしているんだ。
親が居ないと言っていたけど。

清水だけが幸せなんて。
篠崎の気持ちも分からないくせに。

優柔不断な自分だけが惨め。



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