溺愛の業火
自宅までの道程、歩きながら心は晴れていた。
家の前に、彼女を見つけるまでは。
足は止まり、心は凍りつくような寒さ。
それでも、巻き込んでしまった罪悪感に促される様に、足は歩を進める。
重たい。
心音が響くのを感じ、同じ場所が痛みを伴って息苦しい。
覚悟は出来たと思ったけれど、未練。
想いは、すぐには消えない。
俺の姿を見つけ、彼女は走り寄って来た。
そんなに急いで来るなんて、余程の事があったのだろうか。
「逃げるなんて許しませんよ、松沢くん。あなたは、何か勘違いをしていますよね。……他の人に、私を好きだと言ってくれたのが嬉しいです。」
え?
だって、遊んできた俺の周りの子たちが許すわけがないと思っていたから。
状況が呑み込めず、黙り込んだ俺に最高の笑顔を見せる。
「馬鹿ですね。女の子は、好きな人が何を考えているのか敏感ですよ。……あなたに本命がいると、周りの子たちは知っていたんです。」
嘘だ。そんな。
上手く騙せていると思って、用心深いつもりだったのに。
それに俺の気持ちを、君が周りに知らせたかったなんて。