溺愛の業火

「マジか。」

顔に両手を当て、自分の恥辱に耐えられず座り込む。
俺の頭に手を置いて撫でながら。

「マジです。ね、松沢くん。私と付き合って頂けますか?」

単純に、真っ直ぐ進めば良かっただけが、何て遠回りをしたんだろうか。
悔しさに、負けてはいられないと顔を上げる。

「付き合ってあげる!俺は容赦しないからね。」

俺は清水とは違う。
だけど、誰だって相手の気持ちなんか全て理解できないのだから。

「ふふ、図書委員の彼に感謝してくださいね。」

君への想いを邪魔した俺に、あいつが動いてくれたのかな。

「嫉妬しかないよ、今は。」

大事にするね。
周りにバレバレなら、尚の事。

「君を傷つけるのは、俺だけだ。」

立ち上がって抱き寄せる。

共有する温もり。
気持ちが通じ、幸せに浸りながら、甘い一時。

「……ねぇ。上がって行かない?」

「ふふ、嫌です。」

親が居ないから、どうしてもチャンスを逃したくない。

「少しだけの時間だから。」

「さっき、チャイムを押したのですが不在ですよね?」

俺の考えを見通して、意地悪な微笑み。
余裕に苛立ち、俺は君の唇を奪う……



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